研究概要 |
黒質および線条体に分布するセロトニン線維の, 起始核を明らかにし, セロトニンニューロンと錐体外路系諸核との間の神経回路の形態的機能的意義を検索した. Wistar系ラットを用い, 黒質ならび線条体領域に蛍光色素(3%True Blue水溶液0.25μlまたは5%Propidium iodide水溶液0.3μl)をミクロピペットを使用して定位的に注入, 逆行性標識法によって起始ニューロンを同定, さらにセロトニン免疫組織化学(PAP法またはABC法)を行い, 蛍光標識されたニューロンとセロトニンニューロンの関係を追究した. 一側の黒質に蛍光色素を注入した場合に逆行標識されるニューロンは, 背側縫線核とその周辺の中心灰白質(laterodorsal tegmental nucleus)に分布し, 一部は被蓋網様体の中に散在性に存在していた. しかし他の縫線核にはその出現は観察できなかった. 標識ニューロンの分布域を詳しく分類するため, 背側縫線核を4部, すなわち腹内側, 背内側, および左右の外側部に分け, セロトニンならびに非セロトニンニューロンの標識率を定量的に検討した. その結果, 標識ニューロンの44%は背側縫線核の同側の外側部に, 33%は背内側部, 21%は腹内側部, 2%が対側の外側部に認められた. 蛍光標識されたニューロンのから62%はセロトニン含有ニューロンで,他は非セロトニンニューロンであった. なお蛍光色素とセロトニン免疫組織化学とによって二重標識されるニューロンは, 同側の外側部46%, 背内側部32%, 腹内側部19%, 対側の外側部3%で, 背側縫線核の外側部および背内側部のセロトニンニューロンが主として黒質に線維を送っていた. 蛍光標識される非セロトニンニューロンは同側の外側部41%, 背内側部35%, 腹内側部23%, 対側の外側部1%で, 線条体と黒質にそれぞ別種の蛍光色素を注入した時, 両色素で二重標識されるニューロンは, 背内側部に存在するニューロンであった.
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