研究概要 |
錐対外路系のうち, 特に線条体-黒質系および線条体-淡蒼球系にはγ-アミノ酪酸(GABA)作働性抑制ニューロンが存在し, 黒質-線条体系ドーパミン作働性ニューロンおよび線条体内に存在するコリン作働性介在ニューロンと共に, 運動機能の調節に重要な役割を演じていることが知られている. 本研究では, 黒質-線条体系ドーパミン作働性ニューロンを選択的に破壊することが知られているMPTPの投与, および諸種のニューロンを破壊することが知られているカイニン酸の黒質内投与により上記のドーパミン作働性ニューロンを破壊したラットを用いて, 線条体-黒質系および線条体-淡蒼球系のGABA作働性にどの様な機能的変化がみられるかについて, 特にGABA_Aレセプターの場合を中心に検討を進めた. 1)ベンゾジアゼピン・アフィニテイカテムを用いて約4000倍精製し, しかもGABAレセプター, ベンゾジアゼピン・レセプターおよびcl^-イオノフオアーと共役能を有するGABA_Aレセプター複合体を抗原として家兎を免疫することにより, 特異性の高いGABA_Aレセプター免疫抗体を得た. この抗体を用いて脳内GABA_Aレセプターの分布を検討したところ, 錐体外路系に属する黒質や淡蒼球などの細胞体や樹状突起に強い免疫反応陽性部位が認められた. 2)カイニン酸の線条体内注入は, 動物に回転運動などの異常行動と共に, コリン作働線介在ニューロンの破壊と基底核内GABA_Aレセプターの機能亢進を招来した. 3)MPTPの投与は運動失調, 筋強直など, パーキンソン病様の行動異常を招来したが, この場合従来より知られている黒質-線条体系ドーパミン作働性ニューロンの機能低下のみならず, 線条体-黒質系および線条体-淡蒼球系GABA作働性ニューロン群にも機能低下が出現し, 特に淡蒼球および黒質に存在するGABA_Aレセプターにまで機能変化が波及することが判った.
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