研究概要 |
今回は高血圧ラット心筋横細管を中心とした超微形態学的構造変化の解明を目的として高血圧ラット心筋のゴルヂ黒化標本を作製し超高圧電顕立体観察およびその定量解析を試みた. 材料としては生後2〜15週令の高血圧自然発生ラット(SHR)を用いた. 結果:ゴルヂ黒化法によりSHR心筋横細管は選択的に染色された. 横細管は横走管, 縦走管, 扁平槽状部からなり, 各成分は生後発達と共に対照ラットと基本的に同様の構造的変化を示した. しかし対照に比し各発達段階において心筋細胞間での横細管構造差がより著明であった. はじめ, 盲端におわる横細管の短い分枝が多数に認められ, 10週令以降になって, 複雑な管状構造から成る叢状の帯が, Zbandに沿って形成されるのが認められた. また, このような複雑な構造の初期像は5週令から既に認められた. 扁平槽状部分は加令と共に減少したが, 15週令でも多量の扁平槽状部を残す細胞が少数残存した. 超薄切片標本では叢状構造に対応すると考えられる部分には筋小胞体と横細管から成る複雑な迷路様構造が存在することが確認された. また小胞体のみが染色された少数の細胞では, 異常に発達した筋少胞体を有するものが認められた. 考察:心筋細胞間における横細管の多様性は, 心臓肥大下で心筋細胞間に発達の程度の差, 引いては機能差が正常に比べて著明に存残する事を示すと考えられる. 複雑な叢状の分枝構造の機能的な意義は不明であるが, 超薄切片像で, 横細管と筋小胞体との混在が認められるところから両者の接触面積増加に関与すると考えられた. 現在, 横細管の構造と心筋細胞直径との相関関係の有無, 横細管と筋小胞体の形態的, 量的相関, 横細管の立体定量解析等の研究を進めている.
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