研究概要 |
(目的)脂肪酸結合蛋白質(fatty acid binding protein;FABP)は分子量約15,500の脂肪酸担体蛋白質で, 脂肪酸の輸送・代謝に関係するといわれている. 心筋においてFABPが肥大や虚血等種々の病態において重要な役割を果たすことが予測される. 本研究の目的は, 高血圧性心肥大及びその退縮の心筋脂肪代謝に及ぼす影響を解析することにある. (方法)20週令SHRにNicardipine(N)160mg/kg/day,Hydralazine(H)40mg/kg/day又はEnalapril(E)30mg/kg/dayを4週間投与(投与後の血圧, 心重量, FABP量を定量し, 無治療対照群と比較した. (結果)(1)血圧は対照群れに比べ, N, H, E群で有意に上昇が抑制された. (2)心重量も対照群に比べ, N, H, E群で有意に上昇が抑制された. (3)細胞質脂肪酸結合能は対照群では増加したが, N, H, E群では対照群に比べ有意に増加が抑制された. (4)細胞質脂肪酸結合能の増加はゲルろ過パターン及びScatchard plotよりFABP濃度の増加によるものと考えられた. (5)肥大心退縮の程度とFABP量の変動との間には有意の相関があった. (考案)心肥大を支配する因子と心筋内FABP量を支配する因子との間に密接な関係があると考えられた, 圧負荷肥大心筋でのFABP量の増加は, 細胞内脂肪酸量増加に対する緩衡作用であると考えた. (結論)心筋FABP量は圧負荷肥大心筋で増加(降圧薬による心肥大の退縮と共に減少した.
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