研究概要 |
心筋細胞障害に起因する心臓死が年々増加しており, その発生原因と防御に関する研究は緊急問題となっている. マウスでは, C3H/J, DBA/J等で, 加齢とともに心筋壊死が自然発生することが報告されている. 大阪大学医学部無菌動物室に於ても, 右心室の壊死と石灰化を発症する一群のマウスを見つけた. これらマウスは, 心停止により急死することが多く, 本年度はヒト心筋障害研究のモデル動物になり得るかどうか検討した. 1.心筋障害発症の年齢的要因: C57BL/10JNマウスでは, 生後6ケ月以内で55匹中44匹(80.0%), 7〜12ケ月齢で26匹中25匹(96.2%), 12ケ月以上生存マウスで10匹中8匹(80.0%)に右心室壁の石灰化と壊死が認められた. BALB/cByJNでは, 生後6ケ月以内で57匹中14匹(24.6%), 7〜12ケ月齢で85匹中27匹(31.8%), CB-17マウスでは, 生後6ケ月以内で18匹中6匹(33.3%), 7〜12ケ月齢で10匹中2匹(20.0%)に同病変が観察された. しかし, C57BL/6J, A/J他60系統では, 全くこのような病変は観察されなかった. 2.心筋障害マウスの病理学的所見: 心筋障害好発系マウスの代表としてC57BL/10JN, 嫌発系マウスとして, C57BL/6Jについて, 病理学的検査を行った. パラフィン切片作成後, 特殊染色を行ったところ, C57BL/10JN系統では, 右心室壁を中心に広範な壊死とカルシウムの沈着, および, 右心室壁の薄層化がほぼ全例に認められた. 3.心筋障害マウスの生化学的検討: ヒトの場合の如く, 心筋障害の早期変化を生化学的に検出できるかどうか検討している. CPK(Creatine Phosphokinase)および, GOT(Glutamate-oxaloacete Transamirase)の測定を行った. 現在のところ, C57BL/10JNおよびC57BL/6Jにおいて特異的な値は得られていない.
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