研究概要 |
虚血性心血管障害において各種の活性酸素分子種が生じ, その毒性により重篤な組織傷害を来すことが知られており, 本疾患治には細胞外区画における酸化的ストレスをいかに阻止軽減するかが重要と考えられる. 本年度の研究予定は, 極めて長い血中半減期を有し, pHが局所的に低下した心血管病巣部位にわずかな残存血流を介して濃縮動員される抗酸素毒性消去酵素群誘導体を開発し, 虚血性心血管障害時の酸化的組織損傷過程を阻止軽減することであった. これに関しては, 1)ヒト赤血球由来及び遺伝子組換え技術により調製したSODを, アルブミンと可逆的に結合する事により極めて長時間血中に循環し, pHが局所的に低下した組織病巣部位に濃縮動員される誘導体に変換することに成功した. 2)本酵素誘導体がランゲンドルフおよびin vivoの系で虚血後再循環性不整脈の発生を極めて有効に阻止することを確認した. 3)分子サイズ及び生体内挙動の異なるSDD誘導体を開発し, 本病態が血管内皮細胞及び心筋細胞膜の代謝及び流動性変化を介することを示唆する所見が得られた. また, 本不整脈の発生が上記細胞系の細胞外空間における活性酸素分子種発現に起因することが明らかになった. 4)血管内皮-心筋細胞培養系の各レベルでの代謝区画制御に注目して解析する目的で, 心血管内皮細胞及び拍動心筋細胞(マウス胎児心由来)の培養系を確立した. 現在, これらの培養細胞系を用いて, 細胞膜上での酸素毒性発現の生化学的背景の解析とビデオカメラによる形態学的観察を行っている.
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