水面に落とした石によってできる波紋のように、放射状に電子倍増させるという、これまでに全くない新しいタイプの二次電子増倍管を試作し、各種特性を測定した。以上のような固有の知見が得られた。 1.分割ダイノード形の二次電子増倍管を試作し、入出力電流特性を測定したところ、増倍率の点では問題があるものの、70μAの出力電流でも飽和を示さず、室間電荷効果が軽減された。 2.連続ダイノード形の二次電子増倍管を試作し、入出力電流特性を測定したところ、市販品と同程度の増倍率のものであり、出力電流は2μAを越えても飽和しない。これ以上の増倍率については、測定器の問題があり、決定できないが、直流法としては十分のものといえる。 3.連続ダイノード形の二次電子増倍管の中心軸にそって、直流および交流磁場を印加したところ、いずれの場合もある範囲で利得の上昇がみられた。これは、ローレンツカガダイノード面に対して平行に働き、電子がうずまき状に走行することにより、衝突回数が増え、利得が増加するものと思われる。 空間電荷効果の軽減と、磁場特性の増加は、放射形二次電子増倍管に特有の現象であり、直流法で使用するには有用なものとなろう。 今後は、より高い増倍率の測定および磁場特性をとること、またこれを利用した各種の実験を行ない実用化をめざす予定である。構造上の問題はあまりないので、表面処理に関する技術・設備の整った機関との共同研究により性能を改良したい。
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