研究概要 |
前年度の予備的結果にもとづいて、高歪三次元ケイ素クラスターであるオクタシラキュバンの合成を行なった。2,2,3,3ーテトラブロモー1,4ージーtーブチルテトラメチルテトラシランもしくは1,1,1ートリブロモーtーブチルジメチルジシランをナトリウムと反応させ、オクタキス(tーブチルジメチルシリル)オクタシラキュバン(1__〜)を得た。メチルシクロヘキサンを用い再結晶して得た1__〜の純品は黄色プリズム状結晶であり、300℃以上でも融解しなかった。したがって、1__〜の融点はかなり高いものと推定され、分子が高い対称性を有していることが示唆された。事実、1__〜のX線結晶構造解析はオクタシラキュバン骨格がtーブチルジメチルシリル置換基間の立体反発を反映して若干歪んでいるものの立方体形状を保持していることを示した。サイクリックボルタンメトリーにより、1__〜の酸化電位を測定し、0.48V(ジクロロメタン中、飽和甘こう電極基準)の値を得た。この値は既存の飽和型ポリシランの中でもっとも低い酸化電位を与えるネオペンチルシクロトリシラン(0.74V)の場合よりも低く、1__〜が高電子供与性ポリシランとしての機能を備えていることを示唆する。これに関連して、1__〜と電子受容性オレフィンであるテトラシアノエチレンとの間に電荷移動錯体を形成し、860nmとシクロポリシランとしては異例な長波長領域に電荷移動吸収帯を示すことを見い出した。 二次元ケイ素クラスターとして、ペルイソプロピルラダーポリシランポリマー〔-(RSiSiR)n-〕(R=iPr)(2__〜)を1,1,2,2ーテトラクロロジイソプロピルジシランの単独縮合を用いて合成した。2__〜の分子量は<MW>^^^ー7600であった。また2__〜は560nm付近を発光極大とするブロードな強い発光を示す。現在、2__〜の電気伝導性や電子複写における正電荷移動能力を調べている。
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