研究概要 |
1.エキシマレ-ザ-発振装置の作成:浜松フォトニクスに依頼してレ-ザ-発振装置C-3228(最大繰り返し周波数200Hz、ビ-ムサイズ6×20mm、レ-ザ-発振パルス幅10ns)を作成した。実験にはKrF(波長248nm,max130mJ)、XeCl(波長308nm,max60mJ)、XeF(波長351nm,max50mJ)の3種のエキシマレ-ザ-を用いた。 2.エキシマレ-ザ-の照射効果:(1)正常血管壁:3種のエキシマレ-ザ-の組織蒸散効果はKrFが最も強く、次がXeCl、XeFの順であった。XeFを除き熱変性の無い平滑なレ-ザ-孔が形成され、直径は一定で深さは照射時間に比例した。(2)動脈硬化性病変:ファイバ-を使わない直接照射法ではKrFは高度な硬化性病変でも充分な破壊・開通効果を示し、XeClもほぼ同様であったが、XeFは弱い組織破壊能を示したに留まった。 3.石英ファイバ-伝達度・減衰率測定:石英ファイバ-(三菱電線ST-U1000F-SY)の伝達度は、KrFが22%と最低で、以下XeCl37%、XeF57%の順であった。(先端出力:KrF:0.4,XeCl:1.0,XeF:4.3mJ/pulse)。20分間照射での減衰率は、XeF:21%,XeCl:36%,KrF:50%であり、これはファイバ-入射端面の劣化が原因と推測された。 4.石英ファイバ-を用いた照射実験:KrFは殆ど効果を示さず、XeClは内膜までの小孔を形成した。XeFでは周辺に熱凝固層を伴なう中膜に達する組織欠損孔を認めたが、接触照射ではこの熱損傷を軽減させ得た。 5.臨床応用に向けての課題と試み:以上のごとく、エキシマレ-ザ-は熱損傷の少ない鋭利な組織切開能、切開深度の可調節性、高度な硬化病変に対する優れた切開効果など、基本的には血管形成術に適合性の高いことが示された。現有の装置では充分な組織破壊能を示し得ず、このははでは臨床応用は難しく装置の改良が必要である。10mJ/pulse以上の先端出力を得るためには石英ファイバ-の改良や発振幅のロングパルス化の方法があるが、物性的に石英ファイバ-には限界があることを考慮に入れ、今後はXeClエキシマレ-ザ-のロングパルス発振による出力の増強を図り、臨床応用を試みる予定である。
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