今年度の研究目標は、開発された新手法の定量分析への応用を検討することと、分析処理の高速化であった。 定量分析を行うには、回折線の積分強度を正確に求める必要があり、ケプストラム法を応用して回折線プロフィ-ルを正確に求めるためのシステムの改良は、重なり合った回折線の分離精度を高めると同時に積分強度の正確な産出をも可能にした。改良したシステムによる積分強度計算の精度については、特性X線Kα_1線とKα_2線の理論的な回折強度が2:1であることを利用し、分析システムにより分離されたブラジリアンクォルツのそれぞれの回折線強度を計算することにより調べられた。 この結果、完全に分離された重なりの大きい55°(2θ)付近のKα_1線とKα_2線の強度比は、88.97:42.99となり、ほぼ2:1になることが確認された。この事実は、二つ以上の異なる結晶面からの回折線が複雑に重なりあったパタ-ンから、それぞれの結晶面に対応するKα_1とKα_2線の対を決定する手段に大変有効であり、熱電半導体として知られているFeSi_2焼結体の回折線分離に役立てられた。そして、分離された回折線から、従来の方法の2倍以上の精度で結晶格子定数を算出することが出来、この効果が確認された。 分節処理の高速化については、数値演算プロセッサの導入により多少その効果を確認出来たが、C言語などの完全コンパイラ-型のプログラミング言語でシステムを組み直さなければ、大幅な高速化を望むことが出来ないようである。
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