研究課題/領域番号 |
63015023
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研究種目 |
がん特別研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
豊島 聰 東京大学, 薬学部, 助教授 (40092283)
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研究期間 (年度) |
1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
1988年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
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キーワード | シアル酸転移酵素阻害物質 / 癌転移抑制 / マクロファージレクチン |
研究概要 |
シアル酸転移酵素阻害物質(KI-8110)による癌細胞転移抑制の機作及び本物質が有効な転移性癌細胞の性質を調べ以下の成果を得た。 1.活性化(tumoricidal)マクロファージのGal/GalNAc特異的レクチンの精製とその癌細胞への結合でのシアル酸存在の有無の影響:既に報告したように、KI-8110によるマウス結腸癌由来転移性癌細胞NL-17の肺への転移の抑制は、NL-17細胞の血小板凝集能、PDGF依存性増殖をKI-8110が阻害するためと考えられた。今回これらに加え、活性化マクロファージの表面に、Gal/GalNAc特異的で末端にシアル酸を有さない糖鎖により結合しやすい癌細胞を認識するレクチンを発見し、精製、性質を調べた。すなわち、癌細胞表面でのシアル酸の転移をKI-8110が阻害すると活性化マクロファージにより癌細胞は認識されやすくなり、結果的に癌転移も抑制される可能性が示唆された。 2.KI-8110によるNL-17細胞のPDGF依存性増殖の抑制とそのガングリオシドによる回復:KI-8110によるシアル酸転移阻害は、NL-17細胞のPDGF受容体へのPDGFの結合には全く影響しなかった。一方、膜の構成成分であるガングリオシドによりKI-8110による抑制効果の回復がみられた。この事実は、KI-8110によるシアル酸転移の阻害はPDGF受容体に直接作用するのではなく受容体の存在する微小環境(膜成分であるガングリオシド等)に作用することを推測させる。種々のガングリオシドについて検討した結果、GD1bにのみKI-8110作用を回復させる効果が存在した。 3.NL-17以外の細胞の肺転移に対するKI-8110の影響:KI-8110により3LL細胞の転移は抑制されたが、B16メラノーマ細胞、MH134細胞の転移は抑制されなかった。これは、KI-8110によるシアル酸転移の阻害効果の有無と完全に相関しており、KI-8110を癌転移抑制剤として用いる場合には、シアル酸転移の抑制される転移性癌細胞に応用すべきと考えられた。
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