研究課題/領域番号 |
63015034
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研究種目 |
がん特別研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
瀬戸 昭 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00025636)
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研究期間 (年度) |
1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1988年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | T細胞白血病 / HTLV-I / 免疫寛容 / 家兎 |
研究概要 |
我々は近交系家兎を用いてATLの動物実験モデルを樹立する過程において、ウイルスが感染しているにも拘らず血清中に抗体が検出されない場合があることを見出した。この現象を感染源となるウイルス産生細胞と宿主側の要因について解析した結果、以下の結果を得た。1、5週令以上の幼若・成熟家兎にHTLV-I産生細胞を接種した場合には、家兎の系統と接種細胞の由来に関係なく、すべての家兎が血清抗体陽性となった。2・3日令の新生仔家兎にHTLV-I産生細胞を接種した場合には、Chbb:HM系細胞を接種されたChbb:HM系あるいはF_1家兎では血清抗体は陽転したが、B/J系細胞を接種された B/J系あるいはF_1家兎では血清抗体は陽転せず、また末梢血リンパ球に細胞障害活性も検出されなかった。B/J 系細胞を接種された Chbb:HM系家兎では血清抗体陽性となった。3.血清抗体陰性家兎の末梢血リンパ球の培養によってウイルス抗原陽性の培養細胞株を樹立することができた。4.血清抗体陰性家兎の血液5mlを雑系成熟家兎に輸血すると1ヶ月後には血清抗体が陽転した。5.B/J系新生仔家兎にB/J系由来細胞を接種する際に、同時にショープ乳頭腫ウイルスを皮内接種したところ、接種部位に3週間後に乳頭腫を認めるようになり、5週令で血清を検査したところ抗HTLV-I抗体は陰性であったが乳頭腫ウイルスに対する中和抗体は陽性であった。以上の実験結果から、新生仔期にHTLV-Iの感染が成立しウイルス・キャリヤーになっているにもかかわらず、血清抗体が陽転しない場合があることは明らかである。この機序については現在検討中であるが、HTLV-I感染による非特異的免疫抑制によるものではなく、ウイルスに対する免疫寛容によりものと考えられる。同様の現象が人においても見られる可能性があることから、抗体陽性者のみをウイルスキャリヤーとすることには問題があるだろう。
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