研究概要 |
HIV-1には9種の遺伝子が同定されている。今年度は試験管内で作製した45種の変異株の生物学的性状を解析した。 1.ヒトリンパ球細胞に対する感染性を調べた結果、gag,pol,env,tat,rev遺伝子変異株は全て感染性を欠いた。一方,vif,vpr,vpu,nef遺伝子変異株は感染性があり、ウイルス増殖が認められた。 2.リンパ球に対する細胞変性能はほぼ感染性と一致していた。ただし、vif遺伝子変異株は使用する細胞の種類により細胞変性効果が弱く、容易に持続感染を成立された。 3.今まで機能が全く不明であったvpr遺伝子に関して、その変異株の性状から、ウイルス増殖をポジティブに制御することが明らかとなった。 4.各種変異株間で機能相補が認められ、complementationはよく起こることがわかったが、recombinationの有無については不明である。 5.LTR内のTAR配列はウイルス粒子産生に必須である。 6.比較対照のため、HIV-2及びSIVの感染性DNAクローンを分離した。 7.SIVの変異株を9種作製し、表現型をHIV-1のものと比較した結果、両者は非常に類似のウイルスであることがわかった。 8.SIVのpol遺伝子変異株とHIV-1のenv遺伝子変異株は機能相補した。 9.HIV-1とSIVの間で生物活性のある遺伝子組み換え型ウイルスの作製に成功した。 以上のごとく、持続感染の成立に関係があると思われる遺伝子、Comple-mentationによる変異株同士の活性化等の新知見を得た。HIV-2やSIVを利用した実験も可能となり、今後さらに研究を進めていきたい。
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