研究課題/領域番号 |
63015090
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研究種目 |
がん特別研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
勝木 元也 東海大学, 医学部, 教授 (20051732)
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研究分担者 |
木村 穣 東海大学, 医学部, 助手 (10146706)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
10,300千円 (直接経費: 10,300千円)
1988年度: 10,300千円 (直接経費: 10,300千円)
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キーワード | オンコジーン / ヒトc-Ha-ras / トランスジェニックマウス / 血管内皮細胞腫 / 個体発癌 / 体細胞突然変異 / 組織特異的発癌 / 高発癌系統 |
研究概要 |
個体発癌におけるオンコジーンの役割について調べるために、ヒト正常(プロト型)又は活性化c-Ha-rasDNA導入トランスジェニックマウスを作成した。導入遺伝子はプロモーター領域を含むヒトゲノムの遺伝子断片である。活性型c-Ha-rasDNA導入マウス胚は個体発生の過程で発生停止、奇形および胚性腫瘍を頻発し、個体にまで発生するものは認められなかった(昨年度一部報告)。 本年度は、プロト型c-Ha-rasDNA導入トランスジェニックマウスを作成し、個体発癌を検討した。得られたトランスジェニックマウスのうちras-H2系統が、きわめて高頻度(11/95)に腫瘍を発生し、調べたすべての腫瘍細胞で導入遺伝子の活性化が認められた。しかし正常組織では導入遺伝子の活性化は認められず、ここで認められる個体発癌は、導入遺伝子の体細胞突然変異による活性化であることが解かった。また癌の種類に偏よりが認められた。11例の癌のうち9例が脾臓、子宮頚部、ソ頭部の血管内皮細胞腫であり、とくに脾臓に多発(6例)していた。この血管内皮細胞腫のうち、試料が採取できたものについて導入遺伝子の活性化を調べたところ、すべての試料でp21蛋白質の第61番目のアミノ酸がグルタミンからロイシンへ変異していることが解かった。他の腫瘍は、皮膚パピローマ(2例)、肺腺腫瘍(合併して2例)であったが、パピローマの1例でp21タンパク質の第12番目のアミノ酸が、グリシンからバリンへと変異していることが確認された。 以上のことから、ヒトc-Ha-rasDNAは正常ではマウスの細胞を腫瘍化することはできないが、体細胞突然変異によって活性化すると、組織特異的に個体で発癌をひき起すことが証明された。今後は、組織特異性と導入遺伝子の活性化との関係を発癌を誘発することによって検討する予定である。
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