研究課題/領域番号 |
63041001
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 埼玉大学 (1989) 北海道大学 (1988) |
研究代表者 |
伊藤 大一 埼玉大学, 大学院政策科学研究科, 教授 (30000657)
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研究分担者 |
MAURICE Wrig マンチェスター大学, 政経学部, 教授
渡辺 千仭 埼玉大学, 大学院政策科学研究科, 教授 (60220901)
村松 岐夫 京都大学, 法学部, 教授 (80025147)
吉野 直行 埼玉大学, 大学院政策科学研究科, 助教授 (50128584)
吉村 融 埼玉大学, 大学院政策科学研究科, 教授 (50008629)
WRIGHT Maurice Department of Government, Manchester University
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研究期間 (年度) |
1987 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1989年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1988年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
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キーワード | 政府 / 産業政策 / 電気通信 / バイオテクノロジ- / 研究開発 / 規制 / 民営化 / 行政指導 |
研究概要 |
本研究は、英国の学術振興機関Economic and Social Research Council(ESRCと略称)と共同して、日英両国における政府・産業関係(GovernmentーIndustry Relations)の比較分析を行ったものである。具体的には、ESRCが開発した分析枠組「政策コミュニティ」を用いて、成長産業を代表する情報、バイオインダストリ-、衰退産業を代表する鉄鋼、造船、および基盤政策としての金融、土地の個別政策分野ごとに政府・産業関係の動態を分析し、それを通して、「政策コミュニティ」に代るより政策レレバンシ-を具えた問題解決型の分析枠組を構築しようと試みた。 さて、3年間にわたる共同研究の成果は豊富かつ多岐に及んでおり、とくに個別政策分野をとり扱った各論的研究のうちには、それ自体として十分学問的評価に耐える優れた業績が含まれているが、ここでは政策分析枠組の改良を図るという本研究のメイン・テ-マにレレバントだと思われる成果のみを要約して示すことにする。 1.分野別の調査研究を通じて明らかにされたことは、英国に比べて、日本の場合、企業の自助努力を引き出すことに力点がおかれ、それだけ民間の自己責任を強調する傾向が強いということである。この点は、衰退産業政策の中心が企業の多角化を促すところにおかれていること(A.Morita,Government and Shipbuilding)、成長産業政策の中心が企業の研究開発と促すところにおかれていること(M.Tanaka,Government and Biotechnology)から読み取れる。政府介入におけるこうした限定性は政府主導型の産業発展という通説的命題と矛盾する。この矛盾は政府介入が産業発展の切り札としてのみ用いられ、現実に政府・産業関係の全過程を覆っているわけではないという仮説によって説明されよう。 2.機能的に捉え直してみると、日英両国にはそれぞれ産業規制の適量とでも称すべきものがあり、それだけの量の規制は不可避であることが判明する。これは規制緩和とよばれているものが、多くの場合、実は規制の質ないし形態の変更に他ならないことを意味する。民営化が電気通信事業の再規制をもたらしたのはその好例である。ただし、それは政府規制である必要はなく、ギルド型規制であっても差し支えない。例えば、英国の場合、M&Aに関するシティの規制が事実上参入規制の機能を果たしていた(M.Wright,City Rules OK?)。この型の規制が弱い日本ではその分政府規制に頼らざるをえず、そのことが上述の通説的命題を生み出す一つの根拠になっている。 3.以上の知見をふまえ、さらに産業基盤に係わる金融・土地政策の分析結果を加えて分析枠組を再構成すると、「政策コミュニティ」を切り札としての政府介入を可能にする組織化された「行政コミュニティ」と、それを包絡するル-ル設定型の「法的コミュニティ」とに二元化されることになろう。そして問題解決の鍵はこの両者の相互作用を政策の性質別に類型化していくところにあるように思われる。 本研究は、本格的な国際共同研究であることに加えて、行政学と経済学の両領域に跨がる学術共同研究であること、およびプロパ-の研究者と埼玉大学大学院政策科学研究科にスタッフとして出向してきている各省行政官との官学共同研究であることといった各般の特徴を具えていた。今回の作業を通じ、国際共同研究、学際共同研究、官学共同研究への確固とした基盤が築きあげられたことは、本研究がもたらした貴重な副産物であったといってよい。
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