研究課題/領域番号 |
63041003
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮岡 伯人 北海道大学, 文学部, 教授 (60002979)
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研究分担者 |
LEER Jeff アラスカ大学, アラスカ土着言語研究所, 研究員
KRAUSS Micha アラスカ大学, アラスカ土着言語研究所, 所長
大島 稔 小樽商科大学, 短期大学部, 助教授 (00142787)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
14,600千円 (直接経費: 14,600千円)
1990年度: 5,900千円 (直接経費: 5,900千円)
1989年度: 5,900千円 (直接経費: 5,900千円)
1988年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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キーワード | エスキモ-語 / アリュ-ト語 / アサバスカ語 / インディアン語 / 母音脱落 / 形態論 / 統語論 / 環北太平洋域の言語 |
研究概要 |
当初の予定どおり、昭和63年度から平成2年まで、三次にわたる現地調査を中心とした資料蒐集ならびに現地研究者(招へい)との共同討議によって、西南アラスカで話されるエスキモ-語とアリュ-ト語にかんする文法面と音声面の分析と記述の深化を図ってきた。さらに、副次的ながら、言語人類学的視点を加味して、語彙資料の蒐集をもおこなった。平成元年からは、大学院生を研究協力者にくわえて、エスキモ-・アリュ-ト語の近隣言語(アサバスカ語など)についての予備的調査にもあたらせた。 エスキモ-語については、音韻論、形態論、統語論の諸分野にまたがる概括的な文法を準備する基礎を固めることができた。もとより、悉皆的な調査というにはほど遠く、細部にわたる問題は多く残っており、また、とりわけ語用論についての情報は、今後の調査に俟たなければならない。しかし、このエスキモ-語が、平成2年度の研究実績報告書で触れたように、形態論と統語論がユニ-クに絡みあう世界でも珍しいタイプの言語であるという事実からするならば、今回の研究計画で得ることができた理解にもとづく、詳細な記述が一般的な言語理論にも重要な寄与となりうることが期待できる。 アリュ-ト語については、音声面と語彙面にいくぶん力点を傾けた調査がすすめられ、とりわけ音声面のうち、この言語にかんする難題として存在してきた母音脱落について解決の見通しがたったことは、重要な成果というべきであって、その一部は国際学会での発表となった。この言語にかんしては、しかしながら、文法面での調査研究が今後のおおきな課題として控えており、継続的な現地調査がさらに続けられる必要がある。 アラスカ原住民の言語は、ほとんどが消滅の危機にたっており、エスキモ-語とアリュ-ト語の関連からだけであっても、その他の近隣の言語の調査に緊急に着手することが必要である。今回の研究計画において、それらの言語の予備調査にあたらせた2名の大学院生は、それぞれの地域においてラポ-ルを見事に確立し、今後、順調な調査をすすめる基盤を固め、調査研究の力をも実地において高めることができた。対象とすべき言語の実態を考えると、今後ますます、若手研究者の活躍が必要とされるなかで、これら両名の成長は、あらたな希望を抱かせるものである。わが国からの、これら有能な若手研究者の派遣が、当学術調査の成果をより実りあるものとするのみならず、調査研究の緊急度がきわめて高い当分野における国際的寄与をさらに高める上でも、きわめて重要な意味をもちうるという期待は、ひとり我々の抱くところに留まらず、はやくも、現地研究者からも寄せられているところである。 3年にわたる今回の研究計画の成果は、今後、参加者が個別に、あるいは、結集して、さまざまな刊行物に纏めあげる計画がすでに立てられつつある。のみならず、われわれ(協力者もふくむ)が中心となって、平成元年5月に開いたシンポジウム「北の言語 類型と歴史」(於北海道大学)ですでに具体的な成果の一部が公表され、さらに、同シンポジウム全体の成果が平成2年末に約500ペ-ジの研究書として出版(三省堂)されるべく、現在、準備が進行中である。 日本とカリフォルニアをひとまず南限においた環北太平洋地域は、言語的、すなわち、類型的ならびに系統的多様性がひときわ眼にたつ、ひとつの連続体であるとすれば、その要というべきアラスカの言語研究は、今後、東北アジアと北アメリカ北西部の諸言語にもしだいに関与を深めていく必要がある。
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