研究課題/領域番号 |
63041011
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京都立大学 (1989) 帯広畜産大学 (1988) |
研究代表者 |
伊藤 眞 (1989) 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (60183175)
染谷 臣道 (1988) 帯広畜産大, 畜産, 助教授
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研究分担者 |
カミル・ハサン イクティ スリヴィジャヤ大学, 教育学部, 講師
アミン イエトノ ガジャマダ大学, 文学部, 講師
アブ ハミッド ハサヌディン大学, 政治社会学部, 上級講師
小山 洋 東北大学, 医学部, 講師 (30143192)
近藤 錬三 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (30003106)
AMIN Yitono Gadja Mada University, Lecturer
ICHTIAR Hasan Kamil Sriwijaya University, Lecturer
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研究期間 (年度) |
1987 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
10,100千円 (直接経費: 10,100千円)
1989年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1988年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | 公的移住 / 私的移住 / ジャワ人の移住 / ブギス人の移住 / 健康栄養状態 / 南スマトラの低湿地 / 地域健康計画 |
研究概要 |
ジャワ人とブギス人が、なぜ移住することになったのか、どのように移住したか、どのように新世界での困難を乗り越えたか、そして、新しい環境のなかでどのように自らを変えていったか、についての報告の結論の概要は以下の通りである。 (1)ジャワ人とブギス人の移住形態について注目すると、ジャワ人の移住の大半が時の政府計画に基づき、土地・家屋の提供を伴うといった受け身的なものであるのに対し、ブギス人の移住は政府の計画とは無関係の自発的な移住であった。ブギス人は政府の援助付きの移住をむしろ「恥」と見なしている。こうした移住形態の違いは、両者の文化的伝統にも起因している。ジャワ人は、グヌン・キドゥルの農村の場合のように、親族、隣人、祖霊との一体性を尊重するなど元来、移住には消極的であるが、ブギス人の文化は、男の外部世界への雄飛を鼓舞するものである。 (2)移住の動機上の相違。ジャワ人の場合、経済的理由、即ち、貧困からの脱出が第一因であったのに対して、ブギス人の場合は、政治的理由、つまり、カハル・ムザカルの反乱などによる治安の乱れが大きな理由であった。 (3)これら(1)、(2)の相違から移住地においても両者の適応形態には著しい相違が見られる。ジャワ人は、居住地と生業を制約されるがブギス人の場合、いづれもその選択は自由である。その結果、ジャワ人は稲作中心の農業に努力を傾けることによってまず食糧の確保に努め、それに成功すると教師などの公職に就いて社会的上昇を計る傾向があり、他方、ブギス人は、稲作のみならず、榔子園経営、貨家業、海運業など様々な業種に進出する。 (4)移住地において社会的統合を計る諸手段はブギス人において卓越している。ジゃワ人集落では伝統的な儀礼は衰微しつつあるが、ブギス人集落ではそれは強く維持され、社会的統合に寄与している。また、婚姻について見るとジャワ人は民族外婚に許容的であるのに対して、ブギス人は内婚志向であり、子女を南スラウェシの出身地の親族と結婚させるなどで親族関係の強化を計る。また、後者では、全国的な同郷会組織が発達しており、情報交換、社会的結合に寄与している。 (5)以上の相違点にもかかわらず、共通点も多い。両者とも母村との関係を保ちつつも、共に母村回帰を志向しない。むしろ、新しい環境の中に、母村の一部と認識される自らの共同体をつくったという意識が強い。また、両者とも子女に高等教育を授け、社会的上昇移動を計ろうとしている。但し、ブギス人の場合、「ハジ」(メッカ巡礼を果たした者に与えられる称号)が社会的上昇の一指標になっている点が特徴的である。 (6)公衆衛生的知見。アイル・サレとグヌン・キドゥ-ル(中部ジャワ)における農民の健康調査によれば、栄養状態には殆ど差がなく、栄養欠乏の兆候も見られない。また、両地域とも、飲料水を雨水に頼るなど環境衛生上の問題が大きかった。前者における乳児死亡率・有病率の高さは、地域保健活動の不活発、地域における組織化の遅れによると推定される。グヌン・キドゥ-ルにおける地域保健活動は、高度の医療サ-ビスを含むものではないが、ジャワ農村部においてより有効に機能しているといえる。 (7)土壌学的知見。(1)南スマトラのアイル・サレ土壌は、細粒質で、極めて排水に乏しい。土壌pH、塩基及び有効態Pが低く、有機物・置換性Al含量及びリン保持率が極めて高い。さらに、全Fe,Mn,Ca含量が極めて低い。粘土はKaolinite,Vermiculite及びSmectiteを優占種としている。自然肥沃度は一般に低い。(2)トゥプス(中部ジャワ)は細粒質で乾燥気味である。土壌pHは中性或いは弱アルカリ性で有機物含量に極めて乏しい。中〜高程度の塩基供給量と中程度のP保持率を有する。また、この土壌は低いSi、高い三二酸化物量及び相対的に高いCaとP含量によって特徴付けられる。化学的に富んでいるが、土壌硬度、土壌流亡、水分状況などの物理性に欠点がある。(3)パレンバン(南スマトラ)土壌は物理的に作物の生育にとって好ましいが、強酸性、低塩基含量等、化学性に乏しい。極めて自然肥沃度が低い。(4)全体的に見て、土壌固有の潜在力はトゥプス、アイル・サレ及びパレンバンの順である。
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