研究課題/領域番号 |
63041013
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
坂本 司 岩手大学, 農学部, 教授 (80001527)
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研究分担者 |
G.W Hutchins ゼームスクック大学, 北クィーンズランド校熱帯獣医学部, 上級講師
R.C.A Thomps マードック大学, 獣医学部, 準教授
板垣 匡 岩手大学, 農学部, 助手 (80203074)
川瀬 史郎 北海道立衛生研究所, 疫学部実験動物室, 室長
THOMPSON R.C.A. Associate Professor, School of Veterinary Studies, Murdoch University
HUTCHINSON G.W. Senior Lecturer, Graduate School of Tropical Veterinary Science, James Cook Univ
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | オ-ストラリア / 単包虫症 / 種内変異 / 肉牛 / カンガル- / 野生豚 / DNAプロ-ブ / 免疫血清的診断 |
研究概要 |
わが国はオ-ストラリアから年間3万頭を超える肉牛を生体のままで輸入しているが、これらの肉牛の17.3〜78.0%に単包虫感染が見られ、この単包虫は人畜共通感染病で人に致死的な疾病を惹起する。それ故、本症がわが国に定着すると深刻な事態が予想される。前回、これらの牛の生産地であるクィ-ンズランド熱帯地域の調査で、同地方には野生動物の間に生活環をもつ単包虫が常在し、そこに放牧される肉牛が高率に感染していることが分った。そこで、昨年度は同州の肉牛の他にカンガル-類や野生豚を調査したところ、カンガル-と共に野生豚では12.0〜27.6%の感染が見られた。対照として、牧場型単包虫が見られるニュ-サウスウェルズ州では牛やめん羊の単包虫感染と共に、キツネと野犬の単包条虫感染状況についても調査した。さらに、西オ-ストラリアではオオクロカンガル-の29%、野生豚の46%に単包虫感染を認め、ディンゴや猟犬からは単包条虫が検出された。そこで本年度は、これらの単包虫病巣と血清を用い病理組織学的検査、電気泳動によるアイソザイムパタ-ンおよびビオチン化DNAプロ-ブを用いた種内変異系の検討、免疫組織学的検討および免疫血清学的診断法に関する検討を行なった。すなわち、いずれの動物においても、単包虫病巣は基本的には単嚢包、多形嚢包および退縮嚢包の4型に分類され、その所見は単包虫の系統よりも、むしろ感染動物の種による組織反応の違が大きく影響することが分った。しかし、牛および野生豚の単包虫病巣では極く少数の例で原頭節形成を示す大形嚢包が見られたが、一般には退行性変化を示すものが多く、嚢包壁を取り囲む外膜層に著明な好酸球浸潤が見られ、特に,野生豚では好酸球顆粒のクチクラ層に接した堆積が見られた。そこで、好酸球性筋炎病巣の好酸球を用い、抗単包虫包虫液血清とHRP標識IgG血清を反応させたところ、単包虫包内液内に好酸球顆粒成分の浸透が証明され、好酸球浸潤や好酸球顆粒成分の堆積と単包虫の退行性変化との間に強い因果関係が示唆された。カンガル-科動物ではオオカンガル-やクロカンガル-の大形種では単包虫嚢包も大形で活発な原頭節形成が見られた。これに対し、ワラビ-などの小形種では、単包虫嚢包は小形で未成熟なものが多かった。現地の路上には、カンガル-や野生豚の轢死体が放置されており、野犬やディンゴなどの餌食となっており、ニュ-サウスウェルズ州ではキツネの47%、野犬の100%に単包条の感染が見られた。次に、オ-ストラリア各地のめん羊と牛から原頭節形成を認める単包虫嚢包を採集し、15種の酵素について電気泳動パタ-ンを比較したところ、オ-ストラリア本土とタスマニア島産との間には9種の酵素遺伝子座に違が見られた。また、ビオチン化DNAプロ-ブを用いた実験でも、ハイブリダイゼイションにおいて明らかな相違が認められた。しかし、野生動物型単包虫では原頭節形成が見られる例は稀なため、他の組織を用いて検討中である。一方、ELISA法およびウエスタンブロッティング法による単包虫症の免疫血清学的診断法については、まだ信頼できるような成績をあげることができなかった。しかしながら、感染牛と非感染牛血清のOD値を比べると、過染群としての平均値は、明らかに非感染群のそれより高い傾向が見られた。従って、今後、抗原の純化精製により、OD値のバラツキが狭くなり、診断法としての実用化が可能になるものと考える。
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