研究課題/領域番号 |
63041029
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤井 英二郎 (1989) 千葉大学, 園芸学部, 助教授 (40125951)
浅野 二郎 (1988) 千葉大, 園芸, 教授
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研究分担者 |
李 基徹 慶北大学校, 農科大学, 助教授
鄭 瞳呼 全南大学校, 農科大学, 教授
安蒜 俊比古 千葉大学, 園芸学部, 講師 (70009322)
糸賀 黎 筑波大学, 農林学系, 助教授 (40114037)
浅野 二郎 千葉大学, 名誉教授
CHUNG Dong-O Chonnam National Univ., Prof.
LEE Kee-cheol Kyungpook National Univ., Associate Prof.
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
10,300千円 (直接経費: 10,300千円)
1989年度: 6,300千円 (直接経費: 6,300千円)
1988年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | 韓国の伝統的庭園 / 韓国の農村集落 / 韓国庭園の水景構成 / 韓国農家の屋敷構成 / 庭園文化の日韓比較 / 集落空間の日韓比較 / 屋敷構成の日韓比較 / 緑地の日韓比較 |
研究概要 |
伝統的庭園については、三国時代百済の都・扶余の宮南池と、統一新羅時代の都・慶州の雁鴨池、さらには李氏朝鮮時代の都・ソウルの王宮や寺院の庭園を中心に調査を進めた。これらの庭園の全体的傾向として、建物と庭園の関係および庭園構成の中心となる水景の構成手法等において、日本の庭園との間に大きな違いが見られた。すなわち、日本の庭園では池や流れが、多くの場合不整形でより自然な汀線や流路に形づくられるのに対して、韓国のこれらの庭園では、特に建物に近い池の護岸や流れが人工的に加工された切石によって整形に形づくられる。一方、建物などの人工物から離れた部分、あるいは亭と呼ばれるような建物の周辺ではそうした加工はほとんど見られず、自然状態のままであることが多い。このことは庭園内の植え込みでも同様で、ほとんどの植え込みはその周囲を矩形の切石などできっちりと縁取られるが、その中の植物については自然な生長に任される。したがって、韓国の庭園では、建物など人の生活域により近い所は人為的に構成されるのに対して、そこから離れるとできる限り自然のままにしておく傾向があり、人為と自然との差が著しいと言えよう。韓国の庭園に見られるこうした傾向は、建物などの人工的部分から庭の前景、中景、遠景部分、さらには庭園の外に広がるより自然的な世界へと段々と推移して行く構成をもつことの多い日本の庭園とは大きく異なるものである。また、日本の伝統的庭園では多くの手を加えながらもより自然に見せようとする点も韓国の庭園と大きく異なるところである。 上記の庭園文化の底辺を成し、またその背景ともなる庶民の生活空間である集落空間については、慶尚北道清道地域、慶尚南道河東地域、全羅北道金提地域、全羅南道海南地域を中心に、その伝統的集落について調査を進めた。集落の立地選定は風水思想にもとづいて、地形を第1とし、水、方位を第2、第3の条件としてきた。したがって、稜線を背にした立地を選ぶためには家屋が北面することもある。日本の集落では地形条件によって家屋が北面することはなく、ほとんどの家屋は南面を原則としている。韓国が地形を重視するのに対して、日本では方位を重視するということができる。 一戸一戸の屋敷地は不整形であり、また屋敷囲いもそれに従って曲折する。この不整形な形態は起伏の少ない平地型集落でも同様であり、韓国の空間の大きな特徴のひとつである。また、韓国の屋敷囲いの多くは石・土塀であり、生垣や屋敷林の多い日本の農家の屋敷囲いに比べてより閉鎖的である。屋敷囲いの閉鎖性は都市住宅でも同様であり、その背景としては集落立地がそうであるように囲いによって気を溜める考えがあるであろうし、また地縁よりも血縁を基本にした社会であることも係わるであろう。 韓国の農家の建物は、小さな窓戸を除いて他を壁で囲んだ閉鎖的な房と開放的な大庁やマルとから成る。閉鎖的な房は部屋の内と外とを明確に分け、房の中から外を眺める意識は見られない。一方、開放的な大庁やマルは建物の内に居ながら外の空間と一体化し得る場である。こうした対照的なふたつの部屋からなる韓国の部屋構成は、日本の農家には見られないもので、日本の農家の部屋はむしろその中間で、軒が深く、部屋は大きな障子で段階的に区切られ、建物の内と外の空間が連続的に変化する構成と言うことができよう。こうした建物の違いは、庭の構成に大きな影響を及ぼす。韓国の農家の庭の植栽は房から眺めるかたちの構成は見られず、庭の周囲を縁取るものであり、また主屋前の植栽は、門や舎廊棟方向からの視線を遮るための配植である。こうした植栽は、部屋の中から眺めることを中心にして構成される日本の農家の植栽と極めて対照的である。また、韓国農家の門の周辺や主屋前の植栽などにみられる対植は部分的にしても左右対称な構成を示すものであり、それを避ける日本の植栽とは対照的である。 上述した集落の立地や農家の庭の構成、さらには王宮の庭園にみられた特徴には、韓国の自然条件、とくにその老年期地形と寒冷で乾燥した気候が基本的な背景となり、それに道教や儒教などが係わり、また中国文化も影響しているものと考えられた。
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