研究概要 |
1.石化化石(材化石)について (1).今回の調査によりChile chicoの第三系から、従来南パタゴニアで記載されていたNothofgagoxylon kraeuseliの存在を確認、これにより南極からチリ中部までに至るミナミブナの現在の分布圏内での材化石資料を全て入手することができた。これにもとずき材解剖学からみたマナミブナ属の種進化過程に対する仮説を提言することができるようになった(大沢・西田、論文準備中)。 (2).現生の南アメリカ産ミナミブナ属の材解剖学のモノグラフに、資料の同定の一部(Notofagus pumilio,N.antarctica)に同定の誤りのあることを、今回得た資料により発見し、南アメリカ産ミナミブナ属の材解剖学をあらためて総説した(Ohsawa&H.Nishida,1990)。 (3).パタゴニアにミナミブナ属の共存しているナンヨウスギ属の材化石(Araucarioxylon)に関して、仮導管内に隔壁構造に似た樹脂を含んだ種が数種類記載されているが、これらの種の間には、それぞれ中間型があり、結局1種に統合できることを提言できた(Nishida,Ohsawa & Rancusi,1990)。 (4).Puerto Guadalの南東のPampa del Zorroにおいて、稜線の白亜系からナンヨウスギ型の材化石を多数発見し、これらが南極産のAraucarioxylon kellerenseと同種であることを確かめた(Nishida,Ohsawa & Rancusi,1990)。 (5).Coihaeque北西のMeseta Corretosoの稜線の白亜系化石林においてAraucarioxylon pichasquenseとA.kellerenseの他、仮導管内にチロ-シスを含んだ新種を発見した。チロ-シスを含む仮導管を持ったナンヨウスギ型の材は、南アメリカでは最初の記録である。更にphyllocladoxylon antarcticumの存在も確認した(Nichida,Ohsawa & Rancusi,1990)。 (6).南アメリカと関連あるオ-ストラリア(タスマニア)の中生代産樹幹化石を入手、木生シダの新属と判明し記載した(Tidwell & H.Nishida,1989)。 2.ミナミブナ属印象化石 (1).Puerto Guadalの東方Meseta Guadalの第三系(Guadal Formation)及びPunta Altaの第三系(Rio Zeballos Formation)から、ミナミブナ属の葉の化石を採集し、3種類を同定し、パタゴニア中部における同属の存在を確認した(Uemura,1990)。 (2).Chile ChicoのMina Ligorio Marquezの第三系より熱帯または亜熱帯型の植物相とみられる葉の印象化石を採集、その中にミナミブナの存在が期待される(植村,準備中)。 3.花粉化石 (1).上記Mina Ligorio Marquezの含植物層より多彩な花粉の存在を発見し、マキ科,フトモモ科、Aextoxycon科、及びミナミブナ属など現在のチリ中南部の植物相を構成する種を同定した(Yoshida,1990)。
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