研究課題/領域番号 |
63041036
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳澤 悠 (1989) 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20046121)
柳沢 悠 東大, 東洋文化研究所, 助教授
|
研究分担者 |
AMELENDU De Jodavpur〈ジョダヴプル〉大学, 歴史学部, 教授
麻田 豊 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (70116135)
臼田 雅之 東海大学, 文学部, 教授 (60151867)
佐藤 宏 アジア経済研究所, 地域研究部, 主任研究員
辛島 昇 東京大学, 文学部, 教授 (10014466)
DE Amelendu Department of History, Jadavpur University, India
|
研究期間 (年度) |
1988 – 1989
|
研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
|
配分額 *注記 |
10,900千円 (直接経費: 10,900千円)
1989年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
1988年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
|
キーワード | 南アジア / 都市形成 / 海外貿易 / 織物工 / 宗派対立 / ウルドゥ-雑誌 |
研究概要 |
この研究は、南アジアにおける都市形成過程と、イスラムとヒンドゥ-両教徒間の関係をはじめ、都市住民の社会的政治的な行動形態な意識について、歴史的かつ多角的視点から解明することを目指して、公文書館における第一次史料の収集、現地における聞取調査や居住区調査を行うこと、収集史料のデ-タベ-ス化、及びその分析を行なうことを主な目的として組織された。 1.現地での調査は、1988年7月半ばから9月後半、及び1989年12月から1990年3月にかけて、南インド、南アジア東部(カルカッタ・ダッカ)、北部インド・パキスタンの3グル-プに分かれて、現地研究者と共同で行なわれた。 主な収集史料は、次のものである。a)ケ-ララ州の海岸沿いの小都市を調査し、14ー16世紀の都市域で中国人・ポルトガル人・オランダ人等が相互に住分けをしていた状況を調べたほか、当時の国際交易商品として重要であった中国製陶磁器片を、南インド西海岸では初めて多数発見することができた。そのいくつかは13・14世紀の青磁で、海上交易、それと関連した南アジア都市形成の過程を明らかにする上での、重要な手がかりである。b)ムスリム商人=地主の地所経営に関する政府公文書を収集し、そこに現われているムスリム商人=地主の子孫から、19世紀ムスリム商人や地主の活動について聞取調査を行い。家族史料を入手した。c)英領期の南インド諸都市の在来手工業に関する行政文書を収集し、代表的手織業中心地4ヶ所の手織工や手織工共同組合で聞取調査を行い、その後の変化を追跡した。d)ロンドンのインド省資料館で収集したIndian News Paper Report(Bengal).1875〜1916はインドの現地語新聞の記事の要約で、現地語新聞そのものは消失したものが多く貴重史料である。e)ムスリムリ-グの指導者の一人、Abul Hashimの発行していたベンガル語週刊誌(“Millat")を写真撮影するなど関連史料を集めた。都市ムスリムを中心とする当時の政治状況や大衆的雰囲気を伝えている。f)英領期に発刊されたウルドゥ-語文芸雑誌の集中的な収集と、老齢作家からの聞取りを行った。作家自身が創作時の時代的背景を十分に覚えていないことも多いだけに、ウルドゥ-文学を通して当時の都市状況を捉えるえていく上で貴重な資料といえる。 2.収集史料のうち、ウルドゥ-文芸誌については、詳細な目録が作成され刊行された。Indian Newspaper Reportについては、現地語新聞の記事の内容をの要約を含む検索用デ-タベ-スの一部分が作成された。これについては、今後重点領域研究「イスラムの都市性」プロジェクトを中心に作業を継続する予定である。 3.史料の分析によって明らかとなった知見は、本調査の研究報告論文集『ムスリム支配期・英領期の南アジア都市と社会変動』および別個の論文の形で発表されたほか、「イスラムの都市性国際会議」において発表された。これらの分析から、a)南インドの都市形成の一つの基礎となった海外交易の歴史的構造の一端が明らかとなり、16ー17世紀の南インド社会の中核となる階層であるナ-ヤカ層の詳細なリストが作成された。b)植民地期の都市民衆に関しては、北インド小都市の手工業者の政治的意識の動向について、その経済的地位の変動との関係で解明され、東インドの都市暴動の実態が分析され、また、同地域の有力なムスリム活動家アブル・ハシムの行動と意識が分析された。南インドについても、ムスリム大地主=商人で政治的にも重要な人物の家族レベルの分析がなされた。こらの分析は、都市をめぐるムスリムとヒンドゥ-の政治的社会的関係を単純な両者の対立関係で捉えることができないことを示している。都市におけるコミュニティ-問題に新たな視角を提供するものと考える。c)都市の手工業については、北インドのムスリムの織物業と南インドのヒンドゥ-の織物業の歴史的変化が詳細に解明された。工場制綿工業との対抗関係のなかで、彼らは簡単に衰退してゆくわけではなく、生産する製品をめまぐるしく変化させて対応して、打撃を受けながらも都市手工業として残存し、時には発展した。そのなかで、かれらのコミュニティ-としての複雑な意識も形成されていった。手織業の都市への集中と近年の都市近郊への「都市脱出」の過程も明らかとなった。
|