研究課題/領域番号 |
63041039
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大貫 良夫 東京大学, 教養学部, 教授 (00126012)
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研究分担者 |
関 雄二 東京大学, 総合資料館, 助手 (50163093)
丑野 毅 東京大学, 教養学部, 助手 (80143329)
松本 亮三 東海大学, 文学部, 助教授 (20114655)
加藤 泰建 埼玉大学, 教養学部, 教授 (00012518)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
20,000千円 (直接経費: 20,000千円)
1989年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1988年度: 10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
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キーワード | アンデス先史学 / 形成期 / カハマルカ / ワカロマ / クントゥル・ワシ / Kuntur Wasi / Gold |
研究概要 |
昭和63年度の調査ではペル-北部のカハマルカ地方のワカロマとクントゥル・ワシの2遺跡の発掘を行った。ワカロマではワカロマ後期の神殿の外周壁を追求し、北面の地下式階段と入口を完掘し、西面のテラス状基壇構造の一部を明らかにした。確認した4つの隅からすると、ワカロマ後期の神殿は少なくとも3回の作り替えの後、後期末期に最大の規模に達し、東西81メ-トル、南北108.7メ-トル、高さ8メ-トルの基壇の上に神殿の建物を建てたものである。基壇の外周壁の根元に見出された多くの壁画の断片は、基壇上の建物には彩色壁画が描かれていたことを示唆している。神殿の南面および東面の発掘では、ワカロマ前期と後期の住居が見出され、神殿基壇の周囲には集落が広がっていたらしい。 クントゥル・ワシはカハマルカ盆地の西の分水嶺を越えた太平洋側の斜面の、標高2250メ-トルの山上の神殿遺跡で、巨石の壁や石彫で有名であったが、学術調査はまったく行われていなかった。遺跡の時代決定、建造物の分布などの概要を把握するため、遺跡中央に長いトレンチを入れた結果、北面は3段のテラスがあり、中央には幅11メ-トルの石造の階段が作られていたこと、頂上部の基壇は東西100メ-トル、南北140メ-トル、高さ8メ-トル、北面に幅11メ-トルの階段を持つこと、基壇の上にはコの字形の小基壇配置と方形半地下式広場があることなどが明らかになった。また、それらの建築は少なくとも3時期にわたって作り替えが成されていた。発掘の過程で、石彫1点が出土した。 平成1年度は、ワカロマとクントゥル・ワシに加えて、コルギティン遺跡の発掘も行った。ワカロマでは西面の調査を継続し、ワカロマ後期の神殿の正面は西を向いており、中央に幅10メ-トルの階段がテラスを結んでいたこと、基壇外周の大きさは、東西124メ-トル、南北108.7メ-トルであることが判明した。 カハマルカ盆地の中のコルギティン遺跡では、カハマルカ文化の建築がよく保存されていること、その下に形成期の土層と建築が埋まっていること、ワカロマ後期とそれに続くライソン期とのあいだにワカロマで仮説的に想定されていたEL期が明らかに存在すること、しかもそのEL期の土器の特徴はクントゥル・ワシにおいて多く見出されることなど、新事実が現れ、ワカロマとクントゥル・ワシでの成果を補強するところとなった。 クントゥル・ワシでは頂上基壇での発掘を拡大した。建築は3時期に分かれるが、第3期のものが上層にあり、1辺24メ-トルの正方形半地下式広場を中心に3方に基壇が配置され、辺の中央には広場からそれらの基壇に登る階段が作られていた。南側の基壇は遺跡の中心部に位置し24×15メ-トルの大きさであった。東の基壇に上がる階段の最上段にはジャガ-の顔を浮き彫りにした石彫がすえられていた。また白い漆喰で上塗りされた角柱4本が、この階段を上がった先の基壇に立っていた。 特記すべきは南の基壇の床下にあった3基の墓で、黄金製品を含む豪華な副葬品をともなっていた。層位的にみると、墓は第2期に作られたものであり、副葬品の土器の特徴も同様である。墓穴は、いずれも直径1.5メ-トル、深さ2.5メ-トルである。三例とも屈葬であり、朱がかけられていた。出土した副葬品は次の通りである。 第1号墓:金製冠1点、石の耳飾り1対、石の垂れ飾り2点、ほら貝3点、土器3点 第2号墓:金製冠1点、金製胸飾り4点、土器2点など 第3号墓:金製耳飾り1対、石の管玉2点、土器2点など クントゥル・ワシは大規模な祭祀建築遺跡であり、ワカロマとは立地条件のみならず建築構造もことなっているので、その全体的解明は、形成期の大祭祀センタ-の実証的研究をより一層進展させることになる。
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