研究分担者 |
長谷 安朗 九州工業大学, 工学部, 講師 (90212141)
三宅 博之 一橋大学, 大学院・社会科学研究科博士課程, 日本学術振興会奨励研 (60211596)
宇佐美 久美子 一橋大学, 社会学部, 助手 (90193854)
木曽 順子 大阪外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師
金子 勝 法政大学, 経済学部, 助教授 (20134637)
山本 由美子 川村学園女子大学, 文学部, 助教授 (00143339)
富永 智津子 宮城学院女子大学, 短期大学国際文化科, 助教授 (90217547)
内藤 雅雄 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語・文化研究所, 助教授 (00014506)
浜口 恒夫 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (70030137)
中村 平次 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語・文化研究所, 教授 (70014462)
山崎 利男 帝京大学, 経済学部, 教授 (20012966)
松井 透 川村学園女子大学, 文学部, 教授 (50012969)
DAVID Taylor School of Oriental and African Studies, London University
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研究概要 |
1.本年度は本研究の最終年度にあたり,まず第1にこれまで調査を実施してきたイギリス(ロンドンのサウスオ-ル,ブレント,およびレスタ-,ブラッドフォ-ド),タンザニア(ダル・エ・サラ-ム),カナダ(トロント)の面接調査票(總計物1,200)のデ-タのコンピュ-タ-入力を行い,その結果を解析することを目標とした。各地の実情に応じて調査票の内容を若干変えたため,横断的な比較が可能な形で入力するためのプログラミング,及びデ-タ処理に予想外の労力と時間を要したが,ほゞこの作業を完了し,研究会において単純集計レベルでの検討を行ってきた。その結果は近く中間報告の形で公表する予定である。調査の過程で蒐集した文献・資料を参照しながら,クロス集計を含むより一層立入った分析は,なお今後の課題として残されている。 2.第2に,本調査においては個々のインド人移民と共に,インド人移民の各種組織をも調査の対象として,聞取り調査を行ってきた。インド人移民社会の形成,その機能において中枢的役割を演じてきたのは,これらの移民組織だと考えられるからである。本年度は聞取り調査の結果,及び調査の過程で蒐集したその出版物や関連文献等にもとづき,これら組織の形成史やその機能,役割について,研究会で検討を重ねてきたが,とりあえずその結果を取りまとめ,報告書の一部として公表する準備を進めている。 3.第3に,本調査の実施過程で蒐集した文献・資料(雑誌論文等のコピ-を含む)はきわめて貴重なものであり,わが国で入手,利用が困難なものが少なくない。こうした文献・資料を広くわが国の研究者の利用に供するため,文献・資料目録の作成作業を行ってきた。文献・資料の分類,編集に手まどったため,その公刊までにはなお若干の時日を要するものと思われる。 4.本年度に具体的な作業として行ってきたのは以上の3つであるが,ほゞ月一回の割合で実施した研究会では,一部上記の作業を共同で進めると共に,最終報告書の作成について検討し,各自の役割分担に応じて研究報告を行ってきた。特に90年10月,D.テイラ-博士来日の折には,同氏の分担部分について報告を求めると共に,最終報告書の構成についても同氏の見解を中心に討議を行った。また比較検討の材料として,わが国におけるインド人移民(バングラデシュやパキスタンからの移民を含む)についても,一定の調査を行い,文献・資料の蒐集につとめた。 5.研究会での報告,討論を通じて新たに得られた知見は,要約すればほゞ次の通りである。 (1)英連邦諸国におけるインド人移民の出身地域は,大部分インド北西部に限定されていること。しかし出身階層,出身カ-ストはきわめて多様である。移民の時期は,東アフリカ(タンザニア)では今世紀前半の者が支配的であるが,他の地域では60年代以降の者が大部分を占める。 (2)カナダでは,移民法による送別が第2次大戦後行われてきたため,高学歴,専門職のインド人が圧倒的に多い。インド人移民の社会的,経済的な上昇傾向は強く,特に世代間で著しい。 (3)受入国の社会に同化し,カ-ストや性による差別観が希薄化する反面,宗教や生活慣習等の面では依然として伝統を維持しようとする傾向が根強く,特に若い世代の間ではアイデンティティの危機と結びつき,伝統的文化えの回帰がみられる。 (4)送金や帰国等を通ずる出身地との紐帯は予想外に希薄であり,むしろ宗教,カ-スト等の組織を通ずる集団的な紐帯が強まりつつある。特に宗教,カ-スト組織の全世界的規模でのネットワ-クの展開は,最近の注目すべき傾向である。 (5)移民定着後の時間的経過とともに,教育,さらに老人問題といった新しい問題が重視されはじめている。
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