研究課題/領域番号 |
63041065
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
土 隆一 静岡大学, 理学部, 教授 (60021929)
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研究分担者 |
茨木 雅子 静岡大学, 理学部, 助手 (30109128)
藤吉 瞭 静岡大学, 教育学部, 助教授 (00022202)
野村 律夫 島根大学, 教育学部, 助教授 (30144687)
小泉 格 北海道大学, 理学部, 教授 (20029721)
首藤 次男 九州大学, 名誉教授
NOMURA R. Assoc, Professor, Geological Institute, Fac. Educ., Shimane University
SHUTO T. Professor Emeritus of Kyushu University
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
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キーワード | 新第三紀 / イベント / 太平洋 / 珪藻土層 / 熱帯海中気候事件 / 加速的進化 / 沿岸湧昇流 / エル・ニ-ニョ現象 |
研究概要 |
本研究は、新第三紀に起こった地質学的イベントのうち、特に、中期の16Maを中心とした熱帯海中気候事件、15Ma以降とされる沿岸湧昇流の活発化に伴う珪藻土層の地域的年代的ひろがり、貝化石群に見られる進化の様相などについて、日本との同時性や、太平洋の反対側にあたる南米太平洋側の地質学的イベントの特性を南米太平洋側コロンビア、エクアドル、ペル-、チリ4カ国の共同研究者らと共に検討することが目的である。 昨年度(1988)は11月から12月にかけて約50日にわたり、南米太平洋側4カ国の主要な海成新第三系の野外調査をおこない、今年度(1989)はこれまでの調査と採取試料の解析にもとづき研究の総括をおこなった。これに関連して8月7日から4日間、チリのフェデリコ・サンタマルタ大学(バルパライソ)で開かれた第6回太平洋学術会議中間会議の一端を担って、シンポジウム"太平洋の新第三紀:特にアンデス地域の層序学的・古海洋学的イベント"を開催し、引き続き4日間の現地検討会をおこなった。同シンポジウムには南米太平洋側4カ国のほか、米国、日本を含む8カ国から40名が参加し、27の論文が提出され、盛会裡に終了した。 この間、我々の研究によって明らかにされたことは、1)ペル-南部のカマナ層はミオギプシナなどの熱帯性大型有孔虫化石を含み、これまで地質年代は古第三紀末から新第三紀初めとされてきたが、今回浮遊性有孔虫により新第三紀中期中新世初頭の約16Maであることがわかり、その結果、日本など北西太平洋で顕著に認められる新第三紀中期(16Ma)を中心とする熱帯海中気候イベントは南東太平洋側でも同時に起こった可能性が高い、2)南極の氷床発達に伴う沿岸湧昇流の活発化と海水温の低下は、特に東太平洋側で顕著な珪藻土層の発達となってあらわれ、南米ではペル-とチリ北部に見られるが、ペル-では前記の熱帯海中気候イベントに引き続いて15Ma頃から推積がはじまったと考えられ、これも日本や北米太平洋岸とほぼ同時であるが、チリ北部では珪藻土層の推積は鮮新世の3Ma頃からはじまり、かなり年代的ずれがある、3)北半球中緯度にあたる日本では新第三紀末(3Ma以降)の冷温化に伴って、貝類のSuchiumダンベイキサゴの系統など日本の特有種の仲間に急速な連続的形態変化、すなわち、加速的進化が見られるが、南半球中緯度にあたるチリ北部でも、この海域の特有種と考えられるTurritellaキリガイダマシの系統が同じく3Ma以降に急速な形態の連続変化をしていることが認められる。以上の2つの顕著な例から見ると、このような加速的進化は水温の変動を受け易い中緯度地域の特徴的イベントである可能性が高い、などである。シンポジウムでは南米太平洋側の新第三紀の代表的地層である珪藻土層の構造とその年代的地域的ひろがりに特に論議が集中した。また、貝類の進化の問題については、全体会議でも本研究代表者が講演した。 現地検討会は、チリ北部アントファガスタ北方のカレタ・ヘテドゥラ・デ・メヒリョネス海岸に新第三紀初期から後期まで1500万年間の地層が連続して露出する代表的露頭の前でおこなわれたが、様々なイベントの変化は岩相の変化にもよく表れていることがわかった。 以上のように、太平洋の東西両側においていくつかのイベントがほぼ同時に起こっていることが明らかにされた点は注目すべきである。これらは厳密な意味で同時なのか、若干のずれは予想されるのか、太平洋の両側でイベントの様相や特徴のちがいはどのような点にあるのか、などを解明することは今後の課題である。特に、沿岸湧昇流の消長はエル・ニ-ニョ現象に関連し、貝類の加速的進化は現生生物相の成立に関係するなど、現在の地球環境の成立に深い関わりを持っている点で重要なテ-マである。このためには、従来にもまして、日本と南米太平洋側諸国の緊密な共同研究が有効で、今後の国際共同研究の継続と推進を全員で確認した。なお、本年10月に富山で開かれる日本地質学会年会において、南東太平洋およびアンデス地域における最近の地球科学的成果と題するシンポジウムを主催し、我々の国際共同研究の成果を広く学界に発表する予定である。
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