研究課題/領域番号 |
63041078
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加納 隆至 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (40045050)
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研究分担者 |
竹門 直比 京都大学, 理学部, 日本学術振興会特別研 (70202166)
長谷川 寿一 帝京大学, 文学部, 助教授 (30172894)
安里 龍 琉球大学, 医学部, 講師 (60045052)
OKAYASU Naobi Fellowships of the Japan Society for the Promotion of Science for Japanese Junio
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研究期間 (年度) |
1984 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
14,700千円 (直接経費: 14,700千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 12,700千円 (直接経費: 12,700千円)
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キーワード | ピグミ-チンパンジ- / チンパンジ- / Pan paniscus / Pan troglodytes / 集団間関係 / 植物環境 / 社会関係 / 音声 |
研究概要 |
この研究は、ザイ-ル共和国ワンバにおいて、昭和59年度から昭和63年度まで3次にわたって行われたピグミ-チンパンジ-の社会学的現地調査の取りまとめを目的として行われた。とくにピグミ-チンパンジ-の集団間関係、集団内のオス間関係、若い移入メスの社会関係、他種動物との関係、音声伝達、食物の栄養分析を含む植物環境の利用、などに関する資料の取りまとめが行われた。 1.集団間関係:集団間関係の研究はこの現地調査の最重要課題であった。資料の取りまとめは、餌場および自然状態の2つの観察条件に分けて行われた。餌場での観察からは、二集団が餌場を共用している場合は、オス・メス間とメス・メス間の友好的社会交渉と性交渉は同一集団内よりも、隣接集団間の方が多いという驚くべき結果が出た。自然状態でも、隣接集団の間で遊動の同調と同一食物源からの採食、性的・友好的交渉が高頻度で記録されており、ピグミ-チンパンジ-の集団間の関係は、霊長類の中では類の無いものであり、その地縁社会は、人間型のコミュニティと共通基盤を持っている可能性がある。その検討のためには、人類及び他種霊長類の集団間関係との綿密な比較分析が必要である。残された資料の分析と、参考文献の取りまとめが終わり次第、専門誌に成果を発表する予定である。第26回日本アフリカ学会で、五百部裕(昭和61・63年度現地調査参加)と加納隆至が、予備的な発表を行った。 2.集団内のオス間関係:ピグミ-チンパンジ-の集団は、母親集団に求心的なものと特定のオスに求心的なものの2種類がある。その後者について五百部裕が調査をし、リ-ダ-オスの役割が従来考えられていたよりも重要であることを発見した。その成果の一部は第5回日本霊長類学会で発表されたほか、論文集「アフリカの霊長類の社会生態」(教育社)に掲載される。 3.若い移入メスの社会関係:ピグミ-チンパンジ-の未経産のメスが、出自集団を離脱し他集団に入り、妊娠し出産して安定したメンバ-となるまでの過程は、メスの生活史にとって非常に重要であり、伊谷原一(昭和59、61、63年度現地調査参加)によって追跡された。彼は、ワカメスは特定の集団メスと親密な関係を結ぶことを手がかりにして移入を果たすことを発見し、“Wamba Pygmy Chimpanzee(Pan paniscus)Immigrant Females'Social Inetractions with the Resident Females"という表題でまとめ、Folia Plimatologica誌に投稿した。 4.他種動物との関係:ピグミ-チンパンジ-と他種動物の直接的交渉はまれにしか見られない。その一部アカコロブスとの交渉とピグミ-チンパンジ-の狩猟行動について、五百部裕が取りまとめPrimates誌において発表した。 5.音声伝達:昭和63年度の現地調査で竹門直比が、それまで未開拓であったピグミ-チンパンジ-の音声研究を手がけ、初めて音声の分類を行なったほか、不特定個体に対する音声伝達の頻度がきわめて高いという興味ある事実を発見した。この特異な音声伝達法の適応的意義を明らかにするためには、さらに深い研究が必要であるが、予備的な発表は、第5回日本霊長類学会で行われた。 6.植物環境の分析:安里龍は、食物の栄養分析のほか、ザイ-ル側の対応者ンソラ氏と共同で、植物環境の分析を行っている。その成果はKyoto University African Study Monographs誌に投稿を予定している。 7.コモンチンパンジ-の研究:ピグミ-チンパンジ-との比較のため、コモンチンパンジ-の研究がタンザニア共和国マハレ国立公園で行われた。長谷川寿一は、コモンチンパンジ-の性行動を研究し、移入メスの活発な性行動が、子殺しに対する対抗戦略としては説明できないこと等を明らかにした。また、早木仁成(昭和63年度現地調査参加)は、オスの順位について研究した。その結果、オトナオスとワカオスの間の社会的地位が明確に違うことが明らかとなった。
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