研究課題/領域番号 |
63041082
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 (1989-1990) 大阪大学 (1988) |
研究代表者 |
石田 英実 京都大学, 理学部, 教授 (60027480)
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研究分担者 |
リーキー ミーブ ケニア国立博物館, 古生物研究部門, 部長
クウィチ エノク ケニア国立博物館, 地質学研究部門, 部長
バジョペ バルク ザイール自然科学研究所, 主任研究員
中務 真人 大阪医科大学, 医学部, 助手 (00227828)
中野 良彦 日本モンキーセンター, リサーチフェロー (50217808)
仲谷 英夫 香川大学, 理学部, 助教授 (20180424)
牧野内 猛 名城大学, 理工学部, 講師 (50131214)
石田 志朗 山口大学, 理学部, 教授 (40025268)
LEAKEY Meave National Museums of Kenya, Dept. of Palaeontology, Director
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
61,000千円 (直接経費: 61,000千円)
1990年度: 21,000千円 (直接経費: 21,000千円)
1989年度: 22,000千円 (直接経費: 22,000千円)
1988年度: 18,000千円 (直接経費: 18,000千円)
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キーワード | 人類起源 / ホミノイド進化 / 古環境 / 中新世 / 東アフリカ / 古生物学 / 地質学 / 化石 |
研究概要 |
人類起源の過程と機構は、人類史の大きな問題として古くより問われ、人類学はその解明を主要課題の一つとしてきた。現在では人類史を約400万年前まで追えるに至っているが、その以前については依然として億測の域を出ていない。したがって400万年以前の人類化石の発見と、それらが生存した環境的背景の分析が人類起源研究での重要課題となっている。さらに近年、現生の霊長類と人類に関する生化学的および分子生物学的解析は、チンパンジ-やゴリラとヒトとの極めて強い類縁性を指摘し、いわゆる分子時計を用いた計算では、ヒトとチンパンジ-との分岐年代が約500万年前と推定されている。したがってこれまで未発見のままとなっているチンパンジ-やゴリラの化石の調査も重要な課題となってきた。 本調査プロゼクトは上の状況を踏まえ、人類誕生の高い可能性をもつ東アフリカの中新世中一後期に焦点を絞り、古人類学的、古生物学的および地質学的方法を駆使した有機的・総合的な調査を行なった。さらにチンパンジ-やゴリラの化石発見ための予察的調査をザイ-ル東部においても行い、また発掘化石標本の解析用比較資料の収集として現生大型類人猿の形態学的計測を欧米数カ所の研究機関において行い、中新世ホミノイド(ヒト上科)のとそれらの生息環境の解明に努めた。具体的には、1.北ケニア、ナチョラ(中新世中期)での調査、2.北ケニア、サンブル、ヒルズ(中新世後期)での調査、3.ザイ-ル東部、セムリキ川西岸域(シンダ・モハレ:中新世中一後期)での調査、4.ザイ-ル東部、タンガニ-カ湖西岸域(バラカ:中新世後期)での調査、5.ケニア国立博物館での発掘化石標本の比較解析(サンブル・ホミノイドおよびケニアピテクスなどの霊長類、哺乳類化石)、6.欧米(大英博物館、コットン-パウエル博物館、ベルギ-中央アフリカ博物館、チュ-リッヒ大学、アメリカ博物館)における現生大型類人猿(ゴリラ、チンパンジ-、ピグミ-、チンパンジ-、オラン・ウ-タン)の形態計測と模型標本の作製等であった。 これまでに採集・発掘した化石標本は、霊長類、哺乳類、爬虫類、魚類、軟体動物など多様かつ大量である。霊長類については中新世中期のケニアピテクス(中型類人猿)、ニアンザピテクス(小型類人猿)、ヴィクトリアピテクス(中型オナガザル類)、中新世後期のサンブル・ホミノイド(大型ヒト上科)であり、我々のケニアピテクス研究は、以前にサイモンズやピルビ-ム、LSBリ-キ-により提唱されたケニアピテクス初期人類説を否定することとなった。サンブル・ホミノイドについては、より詳細な比較解析を進める中で、この大型ヒト上科霊長類は突顎など原始的な類人猿に似る形質を顔面に保持するものの、純頭型大臼歯と大型化した身体の組合せは食物、咀嚼様式、運動様式において鮮新世アウストラロピテクス類への近接を窺わせている。したがって、この大型ホミノイド調査は、人類起源を明らかにする上でますますその重要度を増していると言える。幸いなことに一連の調査を通じて追加化石の発見の可能性も高くなりつつある。 サンブル・ヒルズとナチョラ地域を層序学的にみると、6累層(下部よりナチョラ、アカ・アイテパス、ナムルングレ、ナニャンガ-デン、コンギア-ナグバラットの各累層)が認められ、そのうちの2累層、すなわちアカ・アイテパス累層とナムルングレ累層からこれまでに大量の化石を採集、発掘した。前者は約1500万年前の河成層でケニアピテクスなどを産し、その古環境は付随する動物、植物化石と化石の出土状況から沢沼を伴う森林帯が推定される。後者は約900万年前と推定され、ここからサンブル・ホミノイドが発見された。その古環境はウマ類やウシ類などの系統比較(北アフリカとヨ-ロッパ産の化石と強い類似性を示す)からサバンナないしは疎開林帯と考えられる。今後さらに多くの哺乳類化石の追加が見込まれるため、環境復元の精度はより高ものとなろう。 2年度に亙るザイ-ル東部調査では、シンダ・モハレ地域から多くの化石(哺乳類、爬虫類、魚類、貝類)を採集、発掘し、それらに基づき詳しい古環境解析を進めている。霊長類化石の発見は今後の調査に期待しているところである。
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