研究課題/領域番号 |
63041085
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松田 准一 神戸大学, 理学部, 助教授 (80107945)
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研究分担者 |
藤谷 達也 海技大学校, 教養科, 助教授
北 逸郎 秋田大学, 鉱山学部, 助教授 (10143075)
長尾 敬介 岡山大学, 地球内部研究センター, 助教授 (40131619)
野津 憲治 東京大学, 理学部, 助教授 (80101103)
宇井 忠英 神戸大学, 理学部, 教授 (10007164)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
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キーワード | 地球化学 / 火山 / トルコ / プレ-ト衝突帯 / ストロンチウム同位体 / 希ガス / ヘリウム同位体 / 炭素同位体 |
研究概要 |
本研究は昭和62年度の予備調査、昭和63年度の本調査、平成元年度の総括と3年間にわたって行われた。予備調査では、本調査の打ち合せ及び調査地域の下見と予備試料の採集が目的であった。 トルコ東方のVan湖の北側に並ぶ第四紀の火山と中央部の火山地帯から約30個の岩石試料と約15個の水・ガス試料を採集した。本調査では北部のアナトリア断層地域、西部の地熱地帯からは水・ガス試料を中心に、また中央部、北部にかけて岩石試料を中心にほぼトルコ全域から、計約100個の水・ガス試料と約150個の岩石試料を採集した。予備調査、本調査で得られた試料は日本に持ち帰り、岩石試料については薄片の顕微鏡観察、主成分元素・微量元素成分、Sr同位体比、KーAr年代、また、水・ガス試料については希ガス及び炭素・水素・窒素の同位体比が測定された。これらの生デ-タは“Initial Report on Geochemical Data"のPart I と Part IIとして関係者に配付された。本成果概要に添付した冊子体の成果報告書はこれらのデ-タの集大成である。 これらSr同位体比や希ガス及び軽元素の同位体比などの地球化学的研究から、テクトニクスに関係したトルコ各地域での地下構造が明らかになった。 東部地域はアラビアプレ-トがユ-ラシアプレ-トに衝突しているところであり、Karacadagはアラビアプレ-ト上にある。Sr同位体比は0.7033ー0.7039と比較的低く、マントルの値に近い。マグマの発生時にマグマ、地殻間の相互作用が少なかったことを示している。さらに東方にはプレ-ト境界上に並ぶAraratやNemurutなどの新しい火山があるが、これらのSr同位体比は火山毎に非常に異なっている。例えばAraratでは他の火山よりも低い値になるが、Nemurutでは0.7035ー0.7083という大きなばらつきを示す。またSr同位体比とシリカ量に正の相関があり、このことから地殻の混入の程度がマグマの同位体比を決定しているように思われる。これら東部火山の線上分布に対してKーAr年代は系統的な相関がなく、ほぼ独立的に不均質なマグマ群からこれらの火山が形成されたことを示唆している。この地域のHe同位体比は全ての試料で大気のHeより高い値を示し、マントルHeの存在が明らかである。また、その上限値は島弧の火山にみられるHe同位体比の上限値に等しいことから、沈み込み帯と衝突帯で希ガスからみると同様のマントル構造を持っていることが示唆される。一方、この地域におけるバブルガスはCO_2が主成分でありδ^<13>C値は1±1〓の比較的高い値を示すことから、海成炭酸カルシウムが広く存在することがわかる。 中央部地域はアフリカプレ-トにトルコマイクロプレ-トが沈み込んでいるところであり、ErciyesやHasanなどの火山がある。Sr同位体比は0.7038ー0.7058であり、世界のプレ-ト沈み込み帯での火山と同様の値になっている。ただ、He同位体比は東部より高い値になっており、東部の火山よりも地殻物質の影響が大きい。Erciyesについては約2m.y.前からのKーAr年代が得られており、東部のAraratやNemurutよりも早い時期に火山活動があったことが示唆される。 北部地域のアナトリア断層沿いではHe同位体比が大気の値と同程度か4倍程度の高さのものがあり、大規模な断層や若い火山活動によりマントル起源のものが大規模に放出されているのがわかる。炭素同位体比も-2±2〓の値であり、火山性である。 西部地域はアフリカプレ-トがエ-ゲ海プレ-トに沈み込んでいるところであり、Kulaがエ-ゲ海島弧の延長上にあるところである。KulaのSr同位体比は0.7030ー0.7035であり、エ-ゲ海島弧の火山岩と比べても非常に低い。また、He同位体比、炭素同位体比共にKulaについてはマントル起源の存在を示唆している。炭素同位体比は-5.5ー-6.6〓の低さである。しかし、その他の西部の地熱地帯からは大気よりも低いHe同位体比が得られており、全体的には多量の地殻起源の放射性Heが存在することを示している。この地域が、エ-ゲ海島弧とどの様につながっているのかは大変に興味のあるところであり、Kulaの特殊性とも併せて今後のギリシャ地域での調査の必要が急務であると思われる。
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