研究課題/領域番号 |
63041088
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
由比浜 省吾 (1989) 岡山大学, 教養部, 教授 (00032673)
渡辺 基 (1988) 岡山大, 教養, 教授
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研究分担者 |
岸田 芳朗 岡山大学, 農学部, 助手 (10116460)
玉 真之介 岡山大学, 教養部, 助教授 (20183072)
萬田 正治 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (70048106)
猪 貴義 岡山大学, 農学部, 教授 (90033381)
渡辺 基 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (40048088)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
1989年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1988年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | ニュ-ジ-ランド / 自由化政策 / 肉用牛 / 草地農業 |
研究概要 |
1985年度の酪農業に続いて、1988年度はニュ-ジ-ランドの肉用牛産業の現地調査を実施し、かつ1989年度にはRae教授を招へいして意見を交換し、その結果として「ニュ-ジ-ランド肉用牛産業の構造」をまとめた。 まずニュ-ジ-ランド牛肉の世界生産量・世界貿易量に占める地位、それが1970年代以降に低迷してきた要因を、需要・供給の両面から検討し、その上で、徹底した放牧型生産であるために、輸出先は北アメリカの加工向けに極端に集中しており、日本市場等への対応はまだ不十分であることを分析した。 次いでニュ-ジ-ランド国内の状況を各項にわたって分析した。地形・気候・土壌等の自然条件を詳細に見て、それと地域別農業類型との関連、土地利用パタ-ンとその変化、主要作目別・規模別農場数の動向等を把握した。畜産国としては好適な自然的基礎を有するが、1984年の労働党政権による経済政策転換があり、その背景を石油危機以降の輸入代替政策と補足的最低価格制度を柱とする農業政策についてみた上で、政策転換の結果としての変動相場制への移行と規制緩和、保護助成撤廃が、輸出部門である農業に深刻な債務危機をもたらしたこと、またその中で協同組合活動の活発化や屠場処理施設の再編成が進行していることを分析した。 次に畜産業の実態として、肉用牛繁殖農場は平均では170ha、飼養頭数250ー400頭であるが自然的、社会経済的条件により地域差があること、肥育システムには3種あるがいずれも放牧によること、1980年代の経営収支分析では純利益がインフレで大幅に減少し、農家はやむなく生産費節減のために肥料代を削減したが、それが生産量減をもたらし、高利率の負債に苦しんでいることなどを分析した。農場類型は8あり、それぞれの経営収支をこまかく検討した。こういう中で農地信託会社が登場したという新しい動きがある。 ニュ-ジ-ランドの在来肉牛品種はアンガス、ヘレフォ-ド、アンガス×ヘレフォ-ドで、それぞれ長所がある。外国から7品種を輸入して在来品種との交雑用種雄牛として試験され、その成績が細かく評価されている。種雄牛選抜計画は、検定ずみの種雄牛と、各農場の種雄牛候補牛とを雌牛群に交配し、後代検定によって選抜する。このデ-タは細かく記録され、情報は農家・育種家に戻されている。繁殖牛は通常は自然交配され、野外で自然分娩し、分娩率は80ー82%である。肉専用種は内需用で、やせ地では3.5年、肥沃地では2.5年まで肥育し、牧草生産の低下する秋までに出荷する。濃厚飼料は与えない。乳用雄牛は去勢せず、輸出用に肥育される。去勢牛より成長率が高く、枝肉重量が多く、脂肪が少い。 実態調査からみた肉用牛生産地帯の草地生産技術は、放牧を中心とした技術体系により成立する傾向にあった。放牧による集約的な生産システムは、土と草と家畜の関係を一つの系として認識し、これら三者を行き交う養分の循環を考慮しながら生態的に組立ててきた成果である。これを支援してきた農業補助金の廃止が今後どう影響するか注目される。また、実態調査からみた農業技術普及システムは、現場と研究の場を行き交う情報のネットワ-クの形成で成立していた。それには農民の自主組織による現地技術検討会と現地技術研修会の役割が大きい。基礎から応用まで、また一般農場レベルの実証に至るまで、理論と実際を一貫した研究体制をとり、研究先導型の役割をはたしながら、教育・行政機関は技術の普及システムに密接にかかわっている。
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