研究課題/領域番号 |
63041090
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
日下部 実 岡山大学, 地球内部研究センター, 教授 (20015770)
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研究分担者 |
篠原 宏志 東京工業大学, 理学部, 助手 (30196406)
野尻 幸宏 国立公害研究所, 総理府技官 (10150161)
佐藤 博明 広島大学, 総合科学部, 助教授 (60019495)
平林 順一 東京工業大学, 草津白根火山観測所, 助教授 (30114888)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
9,600千円 (直接経費: 9,600千円)
1989年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1988年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
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キーワード | カメル-ン / ニオス湖 / CO_2ガス突出災害 / マントル起源 / 湖盆地形 / 熱フラックス / CO_2フラックス / 災害予測 |
研究概要 |
カメル-ン・ニオス湖における1986年のCO_2ガス突出災害は多くの国際的な関心を集め、その研究結果はJour.Volcanol.Geotherm.Res.39,95-276(1989)に特集号として出版された。1986年10月の科研費自然災害(突発災害)による我々自身の調査結果を含む今までの研究によると、ニオス湖から放出されたガスは、ほとんど純粋なCO_2であり、その起源は炭素やヘリウム同位体比からマントル起源であることが分かっている。しかしながら災害発生当時に放出されたCO_2の体積やガス突出のメカニズムについては不明の部分が多く残されている。また湖の湖盆地形そのものの精度が不十分である。本海外学術研究による1988年12月の調査では、まず、ニオス湖および近傍のバンブルエ湖の湖盆地形を音響測深により求めた。今回の調査で得た湖盆図を従来のHassert(1912)による湖盆図と比較すると、(1)最近の高精度化された地形図の利用のために測深地点の位置決めの精度が高い、(2)湖の北東部に0ー50mの比較的浅い棚がある、などの特徴がある。この改良された湖盆図から計算されるニオス湖の容積は0.146km^3となる。正確な湖の容積は溶存全CO_2量の見積りに際しての基本量であり、したがって以下に述べるCO_2フラックスの見積りにも本質的に重要である。 1988年12月の調査結果によればCO_2は湖底に湧出する約30℃の鉱泉にほぼ飽和に近い濃度で溶存した形で湖に供給されているらしいことが判明した。この鉱泉はCO_2とともにFe^<2+>,Mg^<2+>,Ca^<2+>,HCO_3^-などを多量に含んでいる。したがってニオス湖におけるこれらの溶存成分濃度の鉛直分布は深さと共に増加し、湖底付近で急増するという非常に特異な形をしている。水温もほとんど同じパタ-ンを持つ。1986年10月と1988年12月における電気伝導度分布および水温分布を比較すると、約150m以深で水温および溶存塩分濃度の明白な増加が見られた。これらの増化分に150m以深の湖の体積を乗ずれば、それぞれ過去26ケ月間の蓄熱量と塩分の正味の増分を見積ることができる。全塩分濃度(TDS)と溶存CO_2濃度の関係は150m付近で折れ曲がるものの両者の間には比例関係があるので、全塩分の増加量に150m以深のCO_2/TDS比(直線の勾配)を掛ければ溶存CO_2の増加量が算出できる。このような手続きによって求められたニオス湖におけるマントルCO_2のフラックスは5.2-5.6×10^8mol/yであり、この値はニオス湖深層水(〜30m以深)を約50年でCO_2について飽和させるに十分である(Nojiri et al..1990)。この結果は^3Heの濃度分布とCO_2/He比とから見積られるCO_2フラックス(Sano et al..1990)とも大きな矛盾がない。今後のニオス湖の監視の継続はガス突出のメカニズムの解明と災害発生予測の上で極めて重要であるとの結論を得た。
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