研究課題/領域番号 |
63041092
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
辻 守康 広島大学, 医学部, 教授 (90033951)
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研究分担者 |
NOYA Oscar ヴェネズエラ中央大学, 医学部, 教授
岩永 襄 広島大学, 医学部, 助教授 (10034000)
頓宮 廉正 岡山大学, 医療技術短期大学部, 教授 (80032895)
小島 荘明 千葉大学, 医学部, 教授 (00009622)
横川 宗雄 千葉大学, 医学部, 名誉教授 (60009066)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
10,500千円 (直接経費: 10,500千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
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キーワード | 中南米の肺吸虫 / ヴェネズエラ / 疫学調査 / 病態生理 / 形態比較 / 中間宿主 / セルカリア / メタセルカリア |
研究概要 |
中南米における肺吸虫に関する研究は多くの現地の研究者らによってなされ、メキシコ、コロンビア、エクアドル、ペル-、コスタリカなどでそれぞれ新種として発表され、またヴェネズエラでは最近人体肺吸虫症の存在が明らかにされ、メキシコ肺吸虫とは異なるとの報告がなされている。これまでの調査研究の結果からペル-、エクアドル、メキシコ、コスタリカの肺吸虫はメキシコ肺吸虫と同一種との確信を得ているが、ヴェネズエラの肺吸虫についての検討が未だなされていないので、他の中南米種との異同を形態学的、生態学的、疫学的に比較検討を試みた。得られた成績は以下のごとくである。 1.疫学調査.1989年1月から2月にかけてヴェネズエラのス-クル県エルアルガロボ地区とマナカル地区で免疫血清学的手法と糞便および喀痰検査を用いて肺吸虫症に関する疫学調査を行った。 (1)メキシコ肺吸虫抗原による皮内反応では一般住民292名について実施し、陽性および疑陽性を呈した者が13名(4.5%)であった。 (2)皮内反応陽性および疑陽性者13名と血痰を喀出している者1名の計14名について採血し、その血清についてはメキシコ肺吸虫抗原を用いて血清反応を実施した。その結果、酵素抗体法で陽性をしめした者は7名、ラテックス凝集反応で陽性を示した者は4名であった。その内2名は両反応とも陽性であり、抗体価も2名とも酵素抗体法で320倍、ラテックス凝集反応で512倍と高値を示していた。 (3)糞便検査は、全受診者の内糞便を提出した211検体について厚層塗抹法とホルマリン・エ-テル法を実施した。その結果、肺吸虫卵陽性者は見いだされなかったが、腸管寄生虫陽性者は205名(97.2%)と多く、殊に蠕虫類では蛔虫が149名(70.6%)、鞭虫が193名(91.5%)、鈎虫が157名(74.4%)と高率であった。また原虫類で赤痢アメ-バが15名(7.1%)、大腸アメ-バが31名(14.7%)、小形アメ-バが2名(0.9%)、ランブル鞭毛虫が2名(0.9%)の陽性であって、中南米の他国に比較して低率であった。地区別にみるとエルアルガロボは101名中腸管寄生虫陽性者は100名(99.0%)、マナカルは110名中105名(95.5%)で、鈎虫陽性者のみがエルアルガロボで83.2%とマナカルの66.4%に比べて高率であった。 (4)喀痰検査は皮内反応陽性者および疑陽性者と呼吸器症状を有する者20名について行ったが、肺吸虫卵は全例が陰性であった。 2.中間宿主および自然保虫宿主調査 (1)第一中間宿主の淡水産貝アロアピルグス1,500個を採集して破砕法により検査した結果、3個(0.2%)の貝から肺吸虫のセルカリアが検出された。また他種セルカリアも11個体の貝から見いだされた。 (2)第二中間宿主である淡水産カニ74匹を採集して検査した結果、エルアルガロボ地区のカニ2匹(2.7%)から肺吸虫メタセルカリアが検出され、265個のメタセルカリアが採取された。そのうち100メタセルカリアをヴェネズエラで猫に感染させ、残りの165個は形態観察用の標本とした。 (3)自然保虫宿主の調査としてネズミ12頭とオポッサム8頭を捕獲し検査した結果、ネズミはすべて陰性であったが、2頭のオポッサムから62虫の肺吸虫成虫が得られた。 3.肺吸虫の成虫、幼虫および虫卵の形態学的観察 (1)成虫の観察の結果、口吸盤は腹吸盤よりもやや大きく、体表の皮棘は単生で、卵巣は6ー9葉で中央に位置し、睾丸は3ー6葉で複雑分岐は認められなかった。 (2)セルカリアは平均221X67μm大で7対の侵入腺細胞と棒状の排泄嚢を有する。 (3)メタセルカリアは平均822X334μm大で腸管分岐点にまで達する排泄嚢があり60の炎細胞が認められた。体表には単生の皮棘が密生している。腹吸盤の内乳頭は6個、外乳頭は不明瞭であるが約10ー20個である。 (4)虫卵は84X49μmで卵殻は薄く無蓋端は肥厚しており、表面には無数のピットがみられた。 以上の所見からヴェネズエラの肺吸虫はこれまで調査した中南米の他の国の肺吸虫とは異なっており、その種の同定にはさらにカリ肺吸虫のセルカリアなどとの比較を行って慎重に決めることが必要である。
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