研究課題/領域番号 |
63041096
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 高知医科大学 |
研究代表者 |
橋口 義久 高知医科大学, 医学部, 助教授 (10037385)
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研究分担者 |
三森 龍之 熊本大学, 医学部, 講師 (00117384)
江下 優樹 帝京大学, 医学部, 講師 (10082223)
高岡 宏行 大分医科大学, 医学部, 助教授 (00094152)
古谷 正人 高知医科大学, 医学部, 助教授 (00035437)
野中 薫雄 長崎大学, 医学部, 助教授 (10039571)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
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キーワード | リ-シュマニア症 / サシチョウバエ / 媒介者 / 保虫宿主 / 疫学調査 / 皮内反応 / ELISA / 抗原分析 |
研究概要 |
中南米におけるリ-シュマニア症(「リ症」)と、その伝播機構を明かにするため、エクアドル共和国の本症流行地において疫学調査を実施した。本研究計画においては、第1次の調査(昭和61年〜昭和62年)で初めて発見されたアンデス高地のリ-シュマニア症と、従来から知られている低地の同症との比較研究をも試みた。得られた成績は次のように要約される。 1.各種媒介者と原虫の宿主特異性に関する研究:エクアドル国低地から高地にかけてのサシチョウバエ相ならびに原虫感染を調査したところ、同国14地域で40種のサシチョウバエが採集された。このうちすくなくとも11種は同国新記録であり、これによりエクアドルのサシチョウバエ相は既知種を含め56種となった。また、56種のうち23種はヒト吸血性であり、リ-シュマニア症の伝播に関与する可能性がある。エクアドル国でのリ-シュマニア症媒介者としては、第1次調査により既に3種Lutzomiya trapidoi,Lu.hartmani,Lu.gomeziが同国太平洋岸低地で明らかにされている。今回は同国アンデス高地のサシチョウバエLu.ayacuchensisで新たに原虫が証明され、アンデス型リ-シュマニア症の媒介者として追加された。 2.保虫宿主に関する研究:同国太平洋岸低地とアンデス高地において194頭の哺乳動物を捕獲し、肝臓穿刺によって培養材料を採取、検討した。その結果、14頭(7.2%)から原虫が分離され、目下同定中である。アンデス高地のリ-シュマニア症流行地では、イヌ、オポッサム、ハツカネズミ、クマネズミ、オオカミ等で肝生検を実施したところ、イヌとクマネズミから原虫が検出された。イヌからの原虫はLeishmania pifanoiと同定され、ヒトの病原虫と同じであることが明らかになった。なお、クマネズミからの原虫についても目下分析中である。 3.低地と高地の「リ症」の皮膚科学的・疫学的特徴に関する研究:我々の第1次調査(1986年)によって初めて発見されたエクアドル国のアンデス高地の「リ症」と低地の同症を比較した。高地の「リ症」は臨床的には表在性の小病変を形成し、病巣部には多数の原虫が検出される。これに対し、低地のものは大きな潰瘍を形成、しばしば2次感染を伴うが、病巣部での原虫検出が極めて困難である。疫学的には高地の「リ症」がアンデス植性(低木林)に流行地があるのに対し、低地では熱帯雨林中にその流行地が存在する。このため、両者間では媒介サイチョウバエ、保虫宿主等が著しく異なる。 4.各種原虫の特性に関する研究:エクアドル国の「リ症」流行地で患者、保虫宿主、媒介者等から広く原虫を分離し、これらの分離株についてモノクロ-ナル抗体、アイソザイム、kDNA分析を試みた。その結果、エクアドル高地にはLeishmania pifanoiが、低地の流行地では、太平洋側でLe.panamensisとLe.amazonensisが、またアマゾン側で、Le.braziliensisが分布する。これらの病原虫は、それぞれの流行地で固有の伝播様式を維持していることが明かになった。 5.「リ症」患者病巣部の細菌相に関する研究:本症の病巣部における2次感染の影響を知る目的で、低地と高地の患者病巣部での細菌相を調べたところ、グラム陰性菌が前者では37.5%、後者では18.2%に認められた。菌相としてはEscherchia,Serratia,KlebsiellaおよびEnterobacterがみられた。 今後の研究の展開としては、アンデス高地の「リ症」流行地について、広範な調査が必要である。Azuay県Paute以外の地域でもアンデス型「リ症」が流行しているという情報があり、その詳細を明かにしていく必要がある。また臨床面では、原虫種と病型の関係について更に掘り下げた研究を実施する計画である。媒介者や保虫宿主の調査では、従来どおり自然感染を調べるとともに、実験感染による各種の宿主寄生体関係を明かにしていく。疫学面では、分子生物学的手法を取入れ、患者抗体や媒介者、保虫宿主検体をDNAプロ-ブを用いて同定、診断すべく準備中である。分子疫学的研究の実施により調査の効率化が期待できる。 なお、以上に述べた成果については、英文報告書(250頁)を作成し、エクアドル国の衛生行政にその成果を還元していくとともに、世界のリ-シュマニア症研究者に配布し、意見交換する。すでに第1次の成果(報告書)については公表ずみであり、世界各地から多くの意見が寄せられ、今後の研究の進展が期待されている。
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