研究概要 |
シカクマメは,南アジアの未開発野菜であるが,耐暑・耐湿性に優れる高タンパク・高油脂作物としての開発が期待されている。本研究は矮性,日長不感応性,軟種皮性など本調査団によって選抜された有用形質を用いシカクマメの作物的進化を図るために,遺伝子資源の探索,現地における生態や利用状況を調査したものである. 昭和63年度は,昭和64年1月5日に福岡を発ち,マレ-シア各地を調査し,1月14日にペナンからデリ-へ飛び,インド各地を調査した.2月2日にコロンボへ飛び,スリ-ランカの調査を調査を行い,2月10日に帰国した.マレ-シアでは,マラッカ,クアラルンプ-ル,カメロンハイランド,イポ-,ペナン地域を調査,Malay Univ.,Univ.Pertanian Malaysia,Sungkai農場などを訪問し,情報収集や共同研究の打ち合せを行った.シカクマメは各地でみられたが,栽培は小規模で若莢利用を目的としたものであった.インドでは,デリ-,バナレス,カルカッタ,バンガロ-ル,ハイダラバ-ド,ボンベイ地域を調査した.この間に,Nat.Bureau of Plant Genet.Resources,Agra Coll.,Banaras Hindu Univ.,Univ.of Agric.Sci.(Bangalore),Indian Inst.of Hortic.Res.,ICRISAT,Andharapradesh Agric.Univ.などを訪問,情報収集と種子の交換を行った.シカクマメについては20系統を収集したが,いずれも短日性で,矮性系統と称されたものは半蔓性であった.耐寒性については生育末期に低温に耐える程度で,期待した耐霜性については確証がえられなかった.インドはシカクマメの第2次中心地といわれているが,栽培は一般的でなく,試験研究も低調になっていた.スリ-ランカでは,コロンボ及びキャンディ地域を調査,Univ.of Peradeniyaなどを訪問し,育成系統の共同研究についての打合せを行った. 平成元年度は,12月21日に福岡を発ち,上海,杭州,成都,昆明,大理,思茅,景洪,桂林,広州,香港地域を調査し,平成2年1月29日に帰国した.この間に上海農科院,昆明植物研究所,景洪熱帯植物研究所,広西植物研究所,中山大学,広東省農科院などを訪問し,情報収集と意見交換を行った.シカクマメは雲南・広西省で栽培がみられ,特に西双版納の少数民数の集落ではよくみかけられた.しかし,漢民族には馴染まれておらず,耐寒性や日長不感応性,その他有用遺伝子資源について新知見はえられなかった. 平成2年度は,10月12日に福岡を発ち,インドネシアを調査,11月3日にフイリッピンへ飛び,マニラ,ロスバノス地域を調査して,11月12日に帰国した.インドネシアではジャカルタ,ボゴ-ル,バンドン,ジョグヤカルタ,デンパサ-ル,ロンボク,バンデルランパン地域を調査した.この間に,Central Res.Inst.,Gadjah Mada Univ.,Ngipiksari Exp.Sta.,Univ. of Lampungなどを訪問し,セミナ-や談話会を持ち,共同研究の打合せ,種子の収集などを行った.フイリッピンでは,IRRI,Univ.of Philipines(Los Banos),St.Thomas Univ.,San Miguel Co.を訪問し,情報収集と意見交換を行い,共同研究の打合せを行った.インドネシア,フイリッピンともシカクマメはよく普及していた.自家用栽培が多いが,中部ジャワでは市場出荷用の本格的な栽培も行われていた.しかし,シカクマメをダイズに匹敵する生産性の高い食用作物に改良するのは困難との判断から,試験研究は中止されていた.矮性・日長不感受性・軟種皮系統についての話題提供は大変な反響を呼んだ. 今回の調査を終え,シカクマメの南アジアにおける栽培・利用状況や試験研究の現状について知ることができた.これまでに収集・試作した系統は500をこえ,日長不感応性・高温着莢性・矮性草姿・軟種皮・大粒白色種子・弱塊根形成能など,食用作物としての進化に欠かせない遺伝子資源を選抜・固定し,種内分化について多くの知見をうることができた.現地では,耐暑・耐湿性に優れる高タンパク・高油脂新作物が切実に求められているので,これら有用形質を活用した育種の展開は,試験研究を活性化し,シカクマメの作物的進化に貢献できるものと思われる.すでに,スリ-ランカ,インドネシア,フイリピンなどの研究機関との共同研究も緒についた. なお,一連の研究調査成果は,次年度中に著書にまとめ,国内及び国外に紹介するこことにしている.
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