研究課題/領域番号 |
63041104
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
伊藤 学而 鹿児島大学, 歯学部, 教授 (60005064)
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研究分担者 |
MILLER M.R 西オーストラリア州保健局, 研究官
西俣 寛人 鹿児島大学, 医学部, 講師 (90117531)
友村 明人 鹿児島大学, 歯学部附属病院, 助手 (60188810)
小片 丘彦 鹿児島大学, 歯学部, 教授 (80136887)
井上 昌一 鹿児島大学, 歯学部, 教授 (30028740)
MILLER Margaret R. Health Department of Western Australia
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
9,900千円 (直接経費: 9,900千円)
1990年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1989年度: 6,400千円 (直接経費: 6,400千円)
1988年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | オ-ストラリア白人 / オ-ストラリア・アボリジン / 食生態 / 顎発育 / 不正咬合 / 歯科疾患 |
研究概要 |
現代における食生態の変化が、日本のみならず世界的にも顎発育の低下をもたらしている実態を調べるため、オ-ストラリアのバ-ス市において、白人とアボリジンの若年と中年の2世代の歯科疾患と咬合、ならびに食生活の世代調査を行った。調査は、昭和63年夏と平成元年秋に、西オ-ストラリア州保健局の歯科保健部、健康増進部、アボリジン医療部の協力を得て行った。平成2年には、被検者は、白人とアボリジンの中年(50歳前後)と若年(10代後半)の2世代175名である。 1.歯科疾患 歯数は、中年の白人が平均22〜23歯に対して、アボリジンは歯の喪失が多く12〜16歯しかなかった。しかし健全歯数は白人と差がなく、齲歯を治療したかしなかったかによると考えられた。一方、若年では白人、アボリジンともに歯数も健全歯数も多く、両者に差がなかった。歯肉炎の罹患指数は若年で低い値を示したが、両世代ともアボリジンが高く、重症型を示していた。 2.咬合 中年の白人では正常咬合は35〜40%と少なく、不正咬合には上顎前突、反対咬合、叢生の種類があった。一方アボジリンでは正常咬合は73〜75%と多く、不正咬合は男子で反対咬合、女子で上顎前突があったに過ぎない。若年の白人では、正常咬合は41〜57%とやや増加していたが、なかに第1小臼歯を抜去して矯正治療をした者が10〜16%あり、抜歯をせずに矯正治療した者も考慮すると元々の正常咬合は20〜30%と少なかったと考えられる。また不正咬合の種類も多く、男子では上顎前突と叢生、女子ではほかに開咬があった。アボリジンにおいても正常咬合は38〜50%に減少し、不正咬合の種類も上顎前突、反対咬合、叢生、開咬などがみられた。 不正咬合の要因として、中年の白人には不調和型と機能型がそれぞれ35〜55%と40〜45%あったが、アボリジンでは不調和型は7〜25%、機能型も25〜27%と少なかった。しかし若年では、白人、アボリジンとも不調和型がそれぞれ55〜69%、50〜63%に増加していた。下顎の歯で咬耗の程度を調べると、中年の白人では咬耗が少なく特に臼歯部で少ないが、アボリジンでは逆に臼歯部で多く、しかも性差があった。一方、若年では白人、アボリジンともに咬耗が少なく、特に臼歯部で少なかった。両者で若年の不正咬合が増加したのは、どちらも食生活が変化して咀嚼が減少したためと考えられた。 3.食生活 アボリジンの食事には脂肪とコレステロ-ルが多い。炭水化物については、砂糖とでん粉からのエネルギ-摂取の割合は両人種とも似ているが、白人男子では各種炭水化物の摂取量が多い。アボリジンの栄養素摂取パタ-ンは、オ-ストラリア国民栄養調査の5〜10年前の値に類似している。白人女子ではアボリジン女子より脂肪摂取量が低く、教育レベルや社会階層の違いを示しているかも知れない。若年では女子で鉄、カルシウム、亜鉛の摂取が低く、体重のコントロ-ルと食事制限をしている可能性がある。また男子では炭水化物と蛋白の摂取が多くてエネルギ-摂取が最も高く、結果的にほとんどのミネラルとビタミンを摂取していた。 4.まとめ 中年世代に比べて若年世代では歯科疾患が減少したが、不正咬合は増加していた。また中年世代ではこれらの頻度に大きな人種差があったが、若年世代ではほとんどなくなっていた。食生活でも中年世代では人種差が大きいが、若年世代では差が小さくなっていた。この結果から、白人とアボリジンの食生態が早い速度で変化しながら互いに接近し、その影響が両者の歯科疾患と咬合に現れていると考えられた。
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