研究課題/領域番号 |
63041110
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
依田 恭二 大阪市立大学, 理学部, 教授 (80046937)
|
研究分担者 |
神崎 護 大阪市立大学, 理学部, 助手 (70183291)
長繩 貴彦 島根大学, 農学部, 助手 (80183531)
桜井 克年 高知大学, 農学部, 助教授 (90192088)
米田 健 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (40110796)
佐藤 治雄 大阪府立大学, 理学部, 講師 (00081521)
|
研究期間 (年度) |
1988 – 1989
|
研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
|
配分額 *注記 |
20,700千円 (直接経費: 20,700千円)
1989年度: 13,000千円 (直接経費: 13,000千円)
1988年度: 7,700千円 (直接経費: 7,700千円)
|
キーワード | Eucalyptus camaldulensis / 早成樹種 / タイ / 再植林 / 生産力 / 土壌条件 / 呼吸速度 / 蒸散速度 |
研究概要 |
本研究は昭和59年度から60年度に実施された「熱帯の劣悪土壌地域の植生管理とその農林業的利用に関する生態学的研究」を引き継ぐ形で昭和63年度から開始された。タイ国内に広がりつつある採鉱や焼き畑によって生じた劣悪土壌地域において、早成樹種造林と農業的利用の可能性を探り、さらにそれがもたらす問題点を明らかにすることを目的としている。タイでは1970年代からユ-カリ樹種、特にリバ-レッドガム(Eucalyptus camaldulensis)による造林が盛んに行われているため、本研究でもこの種を主要な研究対象とした。異なる由来を持つ4カ所の試験造林地での調査研究により以下のような成果が得られた。 1.早成樹種造林と農業的利用の可能性 ユ-カリの一種リバ-レッドガムを実験材料として、有機肥料、化学肥料、マルチング、客土など、土壌に対する処理を単独あるいは複数組み合わせることにより、稚樹の定着率・成長速度がどう変化するのか、5年間追跡調査を行った。この結果、タイ南部のスズ採鉱跡地の粗砂の堆積地では、イネ科雑草の植物体によるマルチングと、稚樹を植栽する穴に小量の粘土質土壌を客土することが、稚樹の定着率と成長率を著しく改善することが明らかとなった。またマルチングは、キャッサバ、パイナップルなどの作物を栽培する際にも収量の増加をもたらした。他の実験地では特別な土壌処理がなくても、リバ-レッドガムは旺盛な成長を示し、5年で10ー15mの樹高にまで達した。 2.根系構造と土壌環境 リバ-レッドガム植林地で根系の分布構造と土壌構造の調査を同時に行った。この調査により、土壌の物理性(粒度組成、土壌硬度)やマルチング・土壌の耕起などの処理が、根系の発達と分布に大きな影響を与えることが明らかになった。特にタイ南部のスズ採鉱跡地では、非常に緻密な粗砂の堆積層が根系の伸長を著しく阻害していることが分かり、さらに水分及び栄養分の欠乏が植物の地上部と地下部の比(T/R比)や、葉と細根の重量比を極めて小さなものにしていることが分かった。ラテライトの形成母材となるソフトプリンサイトの分布する地域や、キャッサバ栽培で地力の低下した砂質ロ-ム土壌では、根系の伸長を特に阻害する要因は見あたらず、T/R比などもスズ採鉱跡地に比べると大きな値を示し、地下部への投資量が少なく地上部の成長が旺盛であることが判明した。 3.早成樹種造林地の土壌の変化 昭和59年度から平成1年度までの6年間の継続調査により、植林前から、早成樹種の造林を経て、伐採可能なサイズに至るまでの1伐採周期について、土壌の物理性、化学性についての十分なデ-タを取ることができた。その結果、タイ東北部の砂質ロ-ム土壌地帯のリバ-レッドガムの植林地では、土壌水分の減少とそれによる土壌硬化がみとめられた。他の樹種の植林地や自然植生との比較も行ったがその違いは著しかった。化学性については、いずれの実験地でも明確な変化は認められず、唯一有機肥料の利用がpHと土壌有機物量の増加をもたらすことが認められた。 4.リバ-レッドガムの呼吸と蒸散特性 旺盛な成長を示すリバ-レッドガムの生理生態的特性を呼吸と蒸散の2点に絞り調査を行った。リバ-レッドガムは他の造林樹種や自然林の構成種に比べ、呼吸速度・蒸散速度ともに高かった。 5.リバ-レッドガム造林における問題点 我々の調査結果では、少なくとも1伐採周期の間は土壌養分の急激な消耗は認められなかったが、土壌水分の低下とそれに伴う土壌硬度の増加は明白であった。また、蒸散量の測定結果も、リバ-レッドガムの水分消費量が大きな事を裏付けた。リバ-レッドガムは耐乾性も強く造林樹種として有用であるが、水分環境に与える影響の大きさを十分認識して利用する必要がある。
|