研究課題/領域番号 |
63041121
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
山路 勝彦 関西学院大学, 社会学部, 教授 (30090731)
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研究分担者 |
石井 眞夫 佐賀大学, 教養部, 助教授 (20136576)
笠原 政治 横浜国立大学, 教育学部, 助教授 (70130747)
河合 利光 園田学園女子大学, 文学部, 助教授 (90161265)
合田 濤 神戸大学, 教養部, 助教授 (00106593)
松沢 員子 国立民族学博物館, 第二研究部, 助教授 (80099952)
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研究期間 (年度) |
1984 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1988年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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キーワード | オーストロネシア諸族 / 産育慣行 / 性差 / 生殖の民俗理論 / 親族儀礼 / 霊的優越 / シブリング / 生命観 |
研究概要 |
本研究は、オーストロネシア(マラヨ・ポリネシア)諸族のうち、言語的、文化的に密接に関連する地域、すなわち、台湾山地、フィリピン、インドネシアを対象とし、産育慣行の中規模文化領域における比較研究を行なうことを目的としたものである。生殖、妊娠、生産に関わる慣行は、きわめて社会学的現象であり、それぞれの社会が生命の誕生と養育に関して、いかなる意味づけをしているのか、親族制度の基本に関わる行為規範と認識体系を明らかにしつつ、このテーマに接近することが、本研究の目的である。 調査対象は、台湾山地では、タイヤル族、アミ族、ツォウ族、ルカイ族、ピューマ族、パイワン族、ヤミ族、フィリピンでは、ボントック族、イフガオ族、ブキドノン族、ワライ族、そしてインドネシアでは、ゴロンタロ族、サルアン族、スンバ島民である。 調査方法としては、全員、長期にわたる特定村落での住み込み調査を採用し、直接的に産育慣行に関連する項目のほか、親族・家族組織、首長制度などの社会組織、シャーマニズムや精霊・呪術信仰、さまざまな文脈における儀礼的行為、そして行為規範に関わる認知構造などの分野にわたって、幅広く関連する資料を収集した。 本研究は、昭和59年度から63年度にわたる、通算三次の野外調査を骨子としている。その結果として、台湾、フィリピン、インドネシアにわたる広域の比較研究は、当初の予想どおり、有益な知見をもたらしてくれた。産み、育てるという人間生活の基本に関わることの、社会的・文化的意味付けを明らかにしたことは、大きな収穫であった。 本研究の成果は、まず、産育慣行をめぐってこれらの地域での、共通してみられる考えの基盤を発掘したことに求められる。これら諸族は、妊娠、出産などの行為は、精霊信仰、もしくは呪術的観念と深く結びつき、霊的・儀礼的世界との調和を維持することによって、母子、ひいては村落協同体の安全がえられる、と認識している。この方面の研究を通して、彼らの象徴的世界の解明に大いなる貢献をなしたことが、その成果の一つである。 また、産育慣行を取り巻く親族関係の在り方は、初期の予想どおり、さまざまな類型を伴いながらも、キョーダイ関係の重要性を指摘することができた。親族構造の基本的枠組みを考えるにあたって、今後、本研究で収集した資料は有益な意義をもってくると思われる。 その他、産み、育てることに関して、性差がどのように関わってくるのか、新しい知見を得ることができた。産育慣行をめぐる男女の関わり方の研究は、今後いっそう、重要性を増すと思われる。 本研究は、最終的には英文にて発表する予定でいるが、従来より、これら地域での、この種の観点からする調査は乏しかったので、その成果は重要である。そして、今後は、さらに南太平洋地域にわたっての広域での比較研究が望まれる。
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