研究課題/領域番号 |
63041135
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
福井 勝義 国立民族学博物館, 第3研究部, 助教授 (60014510)
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研究分担者 |
GIRMA Kidane アディス, アベバ大学・エチオピア研究所, 博物館長
TADDESE Beye アディス, アベバ大学・エチオピア研究所, 所長
宮脇 幸生 大阪府立大学, 総合科学部, 助手 (60174223)
重田 眞義 京都大学アフリカ地域研究センター, 助手 (80215962)
出口 顕 島根大学, 法文学部, 助教授 (20172116)
稗田 乃 大阪外国語大学, 外国語学部, 助教授 (90181057)
大塚 和夫 国立民族学博物館, 第3研究部, 助教授 (70142015)
堀 信行 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40087143)
KIDANE Girma Institute of Ethiopian Studies, Addis Ababa University
BEYENE Taddese Institute of Ethiopian Studies, Addis Ababa University
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
37,400千円 (直接経費: 37,400千円)
1990年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
1989年度: 22,600千円 (直接経費: 22,600千円)
1988年度: 11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
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キーワード | 生業システム / 多様化戦略 / 民族間関係 / 民俗モデル / 土着的科学 |
研究概要 |
本学術調査の最終年次である平成2年度の研究計画は、以下の3点に重点をおいた。1.本学術調査においてこれまでに蓄積された資料の整理・分析を行う。2.共同研究分担者および内外の専門家間で討議を行い、これに基づき北東アフリカの土着的科学思考というべき民俗モデルを抽出、その適用の可能性を検討する。さらにこれらの研究成果の刊行を準備する。そして、3.いくつかの地域においては現地調査を継続し、資料の充実と深化を図る。以下、これら3点に則し、本年度にえた成果について報告する。 1.本年度までに各研究分担者によって蓄積された映像および音響資料はかなりの量にのぼる。これらの中でも学会での報告、学術論文その他の刊行物における使用頻度が高く、重要なスライドなどの映像資料は、複製化を行い、地域別、テ-マ別に分類整理し、国立民族学博物館に保存すべく、整理している。また各地域から収集された物質文化の標本も、整理の上、同博物館に管理保存されている。いくつかの地域からは、野生動植物、栽培作物などの標本が持ち帰られた。これらの標本も同様に、すべて学術名を同定し、採集日時・地域等の必要なデ-タを添付した上で同博物館に保存された。このように整理分類された資料・標本類は、各研究分担者の学術的な発表に利用されるだけでなく、次に述べるように、共同研究の成果の刊行にも用いられる予定である。 2.各研究者は、国立民族学博物館の共同研究などを利用して、各自の研究成果を検討すると同時に、内外の専門家との討議を通じてより一般的な民俗モデルの抽出に努めた。こうした討議の結果、北東アフリカの生業システムに見られる土着的科学のひとつとして明らかになったものが、牧畜や作物栽培における「多様化戦略」である。こうした「多様化戦略」は、当初ウシをはじめとする家畜の毛色多型や、エンセ-テ、ソルガムなどの栽培作物における品種の多様化という形で、いくつかの社会からの観察が報告された。共同研究の討議を通して、こうした個別的な事例に、いくつかの共通の特徴があることが明らかになった。すなわち、家畜や栽培作物のひとつの種の中における品種レベルでの多様化という現象は、この現象が見られる民族社会において、すべて意図的な選択の結果として現われているということ、こうした「多様化戦略」はさらに、当該民俗社会の生業システムだけにとどまらず、宗教を初めとする他の文化領域とも深いかかわりがある場合が多いこと、そして「多様化戦略」は生業システムとしてみても、種の遺伝子プ-ルに多様な遺伝子を保存することにより、病害などによる壊滅的な打撃を回避する一方、交配による強壮な種を創出するというように、自然環境への巧みな適応戦略にもなり得ているということなどである。また「多様化戦略」のほかにも、「民族間関係」が重要なテ-マとして討議された。さまざまな「民族間関係」は、抗紛争にともなう、他民族による吸収同化や、従属化、そして婚姻交換を通じた連合関係に至るまでいくつかのタイプに分類され、それぞれのタイプのもつ意味が検討された。これらの成果については、エチオピアから招聘したタダセ・ベイェネ、ギルマ・キダネ両博士を交えた討議により、さらに多面的な適用に可能性が論じられた。 以上の研究の成果は、国立民族学博物館発行の"Senri Ethnological Studies"によって、次年度から2回に分けて内外に公表される予定である。またすでに整理されているスライドなどの映像資料を用いて、「季刊民族学」などを通して、同様の成果をより一般向けに公表する。 3.研究分担者である堀と宮脇は、昨年度より継続して調査地に滞在し、それぞれス-ダン中央部とエチオピア西南部からあらたな資料を携えて帰国した。また、福井は12月から1月にかけてエチオピア西南部の農牧民ボディ社会に滞在し、生業システムについての補充調査を行った。また福井、重田、宮脇の3人は平成3年度4月にアディスアベバで開催される国際エチオピア研究会議で成果を公表する予定である。
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