研究分担者 |
山村 滋 大学入試センター, 研究開発部, 助手 (30212294)
池田 輝政 大学入試センター, 研究開発部, 助教授 (90117060)
前川 眞一 大学入試センター, 研究開発部, 助教授 (70190288)
池田 央 立教大学, 社会学部大学入試センター・研究開発部, 教授(客員教授) (00062563)
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研究概要 |
大学入学試験に関する様々な問題が社会問題になり、広く論議されている今日、我が国の各大学においては学力試験中心の試験方法に加えて面接、小論文などの導入による入試の個性化および多様化が進められている。この意味で、学力試験では測定されない学生の潜在能力、性格、及び興味などの人間の情意的側面を含めた適性の測定方法、及びその情報の利用の仕方を研究することは極めて重要な課題である。米国,およびカナダにおいては、学生の能力、性格、興味、価値観などに基づく多面的適性の測定、およびそれに見合った適職の多様な選択システム(SIGI,DISCOVER,CHOICES)も開発されており、その方法論及び実際の運用の仕方に関する知見の蓄積を日本の実情に合わせて調査することは、今後の新しい入試制度の在り方を模索する上で有益な基礎研究になりうるものである。 そこで、昭和63年度には進学適性検査SATとACTPの実施機関としても著名な米国ETS(Educational Testing Services,Princeton,M.J.)とACT(American College Testing,Iowa City,I.A.)を訪問しコンピュ-タによる進路診断システムSIGI,DISCOVERについて精査した。さらに、平成元年度においては、それらの診断システムがアメリカの各大学でどのように利用されているかを調べるために,フロリダ大学、ミネソタ大学等を訪問した。さらに,平成元年度においてSIGI,DISCOVERの他にアメリカで頻繁に利用されているカナダで開発された進学ガイダンスシステムCHOICESの資料を得るためにモントリオ-ルにあるマッギル大学も訪問した。これらの訪問調査により判明した点を,以下6点にまとめて要約する。 (1)アメリカにおいては、学生の進路指導をわが国のように単に上級学校への進学指導ないしは受験指導として捉えるのでなく、進学指導、職業指導を含んだ男女両性の学生の将来の人生設計にかかわるキャリア・ガイダンスとして広く捉えている。 (2)カウンセリングにおいては、さまざまな情報が重視され、情報に基づく進路指導が行われていることが我が国の進路指導と大きな相違点である。さらに、パ-ソナルコンピュ-タを中心とするハイテク技術の応用で、CAC(Computer-assisted Counseling)またはCACG(Computer-assisted Career Guidance)という言葉や概念も定着しつつある。 (3)CACGの代表的システムであるSIGI,DISCOVER,CHOICESを調査した結果、これらは単なる情報処理システムでなく,利持者がコンピュ-タとインタラクテブに会話して,自己の進路の決定の仕方を学ぶ学習システムであり、かつ意志決定を支援するエキスパ-トシステムであることが判明した。また,SIGIとCHOICES等の構成にあたっては,ション・ホプキンス大学のJ.L.Holland教授のモデルが強い影響を与えている。 (4)フロリダ大学を初めとするいくつかの大学においては,上記のCACGが就職相談室におかれ、相談室に配置されたカウンセラ-指導のもとにCACGが大学生の就職指導に効果的に利用されている。 (5)ETSにおいてはアメリカにおける代表的な進学適性検査であるSATのデ-タを利用して、項目反応理論にもとづく日米の比較研究を実施した。また、ETSのスタッフを対象とした日本の入試事情、および共通第1次試験を含む日本の入試制度の説明は多くの人の興味をひいた。 (6)中等教育と大学入試センタ-教育の接続の観点から、アメリカのカレッジボ-ド(College Board)のAP(advanced placement)試験が注目を集めており、受験者数や参加大学数も急速に伸びてきている。 なお、今後米国において得られた知識を基に日本の実情に合致した入学者選抜方法の改善の方向性を示唆し、後期中等教育における進路適性情報の評価・測定システムの開発のために準備していきたい。
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