研究課題
海外学術研究
現在、国立教育研究所では、国立国語研究所、筑波大学等の研究者と協力して、科研費(試験研究)による「パソコンによる外国人のための日本語教育支援システムの開発」の研究を進めており、日本語教育に関する資料の収集、実態の調査等を行っているが、海外における日本語教育の実態等に関しては、充分な情報、資料を得ることができない状況にある。本調査研究により、海外において外国人を対象として実施されている日本語教育の実態を調査し、あわせて使用されている教材等の収集を行い、今後の教材開発、支援システム開発に資することを目的としている。すでに昨年度の科研費(海外学術)によって、英語圏における日本語教育の実態を調査研究することを目的として、オーストラリアとアメリカ合衆国カリフォルニア州の日本語教育機関の調査研究を行ってきている。本調査研究では、漢字使用圏である韓国と台湾における日本語教育の実態の調査研究、および北アメリカ東部およびヨーロッパ地域における日本語教育の動向の調査研究を行った。具体的な研究成果は以下のとおりである。(1)韓国および台湾地域においては、日本語教育がひじょうに盛んである。・韓国では高等学校の第二外国語に日本語が採用されており、履修者数は増加している。・韓国の大学入試科目の第二外国語として日本語選択者数は第2位である。・台湾では制度上、日本語教育は大学で初めて行われることになっているが、第二外国語として選択される言語は日本語が1位である。・台湾で日本語専攻のある大学は4私立大学だけであるが、他の大学にも日本語専攻が置かれる機運が高まっている。(2)韓国および台湾地域での日本語教育のニーズは高い。・韓国、台湾とも私塾としての日本語学校が多く存在しており、昼間大学に行く人や会社に勤める人達が習いに来ている。(3)韓国および台湾地域の日本語学習者は日本語の習得が速い。・漢字をマスターするための苦労がなく、そのために時間を必要としない。・漢字をみればだいたいの意味がわかるので、理解が速い。(4)韓国および台湾地域の日本語教育の問題点・教科書は、日本で作成されたものの焼き直しを使用しているため、現地の実情に即していない。そのため現地の実情に即した教材が望まれている。・文字による理解は比較的容易であるため習得が速いが、聞く・話す能力を高める教授方法が求められている。(5)北米東部およびヨーロッパ地域の調査研究の成果・トロント大学において、パソコンを利用した日本語教育用プログラムを見ることができた。・北米東部およびヨーロッパ地域は、韓国、台湾地域に比較して日本語教育機関の密度が低く、実態調査が難しい面があるが、今回訪問した機関と日本語教育に関する連絡網を作って今後研究をさらに深めていく予定である。(6)その他各国における日本語教育教材やテスト問題等の資料を入手することができたので、それらを試験研究の方で活用する計画である。