研究課題
海外学術研究
本研究は、在米の日本美術作品のデータベース化とカタログの作成、日本間のデータ交換、及び日米美術史学界の学術交流の促進を実現するにあたっての基礎的条件を明らかにすることを目的とし、1.在米の36美術館・コレクション・図書館、10大学に対するアンケート調査2.研究分担者の訪米と主要美術館学芸員・コレクター・研究者に対するインタヴューを実施し、1.本プロジェクトの基本的な目的・意義の重要性を説明し、協力要請を行うとともにアメリカ側からの提言・要望を受け、2.メトロポリタン美術館(ニューヨーク)に対しては、同館蔵の絵画を対象としたパイロット・モデル作成のための基礎データを収集した。〔アンケート・インタヴューの結果の概要〕本プロジェクトの目的と意義については、回答を寄せたほとんど全ての美術館・コレクション等からの賛同を得るとともに、可能な限りの協力を惜しまないとの回答を得ることができた(回答率は、アンケート・インタヴューを合わせて73.9%)。従って、本プロジェクトを遂行するにあたっての基本的条件は整っていると言える。但し、館蔵品データの整備状況及び美術館スタッフの協力体制など、本プロジェクトに対する受け入れ体制は、各館ごとにまちまちであり、個別的かつきめ細かな対応の必要がある。総じて、中小規模の美術館に於いては、学芸員の日常業務に与える影響もそう大きくはなく、また、コレクションも小さい関係で館蔵品データ(調書・写真など)も完備している場合が多い。これに対して大規模な美術館では、学芸員が日常業務に忙殺されている場合が多く、本プロジェクトの受け入れに当たって集中的に充分な時間を取れないこと、館蔵品データが完備していないことなどが問題となる。以下、アメリカ側からの提言・要望のあらましを記す。[本プロジェクト受け入れに当たっての提言・要望]1)現地研究補助スタッフ(アメリカ人大学院生など)の採用による学芸員の負担の軽減。2)作品カード・写真など既存データの活用・既に日本にある情報の収集。3)特定分野についての共同調査・アメリカ側研究者の来日と日本での共同研究。[日米間のデータ交換についての提言・要望]1)日本のコレクションに対する同種プロジェクトの遂行2)日本側データのアメリカへの提供[批判]その他、批判的な意見として、1)本来、日本のコレクションを先に対象とすべき。2)従来、アメリカでの調査結果が日本で報告されない場合が多い。〔メトロポリタン美術館でのデータ収集〕[収集データ]1)館蔵絵画カード(作品名・作者・主題・出陳歴・関係文献などのデータを含む)のコピー2)館蔵絵画の写真の複写3)一部の作品についての実地調査