研究課題/領域番号 |
63042010
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | がん調査 |
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
寺師 慎一 鹿児島大学, 南太平洋海域研究センター, 教授 (90041293)
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研究分担者 |
KODOWO J.R. パプア, ニューギニア大学・医学部血液学講座, 前医学部長&講師
TUKUTAU TAUF パプア, ニューギニア大学・医学部公衆衛生学講座, 医学部長&講師
TOM TALONU パプア, ニューギニア大学・医学部病理学講座, 講師
中島 洋明 鹿児島大学, 医学部第三内科, 講師 (80041474)
山口 幸一 鹿児島大学, 医学部附属病院第二内科, 助手 (30117551)
TALONU Tom University of Papua New Gunea Faculty of Medicine, Department of Pathology, Lect
TAUFA Tukutau University of Papua New Gunea Faculty of Med., Dept. Community Medicine, Dean &
ABAIDOO Kodowo J.R. University of Papua New Gunea Faculty of Med., Dept. Hematology, Former Dean & L
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研究期間 (年度) |
1986 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1989年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1988年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
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キーワード | 科学研究費補助金海外学術研究 / 学術調査 / がん特別研究 / 成人T細胞白血病 / パプア・ニュ-ギニア / ウイルス関連抗体 / 疫学調査 / Epidemiological survey |
研究概要 |
成人T細胞白血病はウイルス感染に起因するTーリンパ球に関連した悪性腫瘍の1つである。しかも、人血液中(血清または血漿)にこのウイルス関連抗体がみとめられることは、同ウイルスの感染の有ったことの事実と、さらに現在そのウイルスの存在していることを示している。しかし、この種のレトロウイルスの存在は、人体にとっては2,000〜3,000人のうち僅か1人しか発病しないという特殊性を有している。さらにこのウイルスは日本の場合、暖流に洗われている鹿児島県、沖繩県、長崎県、高知県および紀伊半島地域のほか例外的にアイヌ人に抗体出現率の高いことが報告されている。 同じ暖流域でありながら日本の国外、特に南太平洋海域(オセアニア)で最大の大陸であり、日本の国土の130%にも相当するパプア・ニュ-ギニアに関する調査研究の資料は皆無に等しい状態にあった。 そのような現状にもとずき我々は1986年より1989年にわたる4ヵ年間を「パプア・ニュ-ギニアにおける成人T細胞白血病の疫学調査」の課題のもとに調査研究をおこなった。そのうち、1986年より1988年の調査研究の3ヵ年間の調査資料を総計数とすると以下のごとき結果が得られた。 各州(Province)別に分類した調査数値で、陽性率の高い州から並べると、Northernでは36例中12例(33.3%)、Morobe96例中31例(32.3%)、East Sepik158例中44例(27.8%)、New Ireland29例中8例(27.6%)、Gulf82例中20例(24.4%)、EeastNew Britain127例中30例(23.6%)、West Sepik17例中4例(23.5%)、Mile Bay37例中8例(21.6%)、Southern Highlands42例中9例(21.4%)、Manus30例中6例(20.0%)、Madang51例中9例(17.6%)、Central(Port Moresby)239例中37例(15.5%)、Eastern Highlands71例中10例(14.1%)、Western Highlands50例中7例(14.0%)、Enga36例中5例(13.9%)、West New Britain22例中3例(13.6%)、Chinbu48例中4例(8.3%)、North Solomoms53例中3例(5.7%) & Western30例中1例(3.3%)となり、その総数は1,254例中251例(20.0%)の関連抗体陽性者がみられ、そのなかで女性例は282例中78例(27.7%)であり明らかに女性にウイルス保有者の多いことが知られた。 このことは、この種のウイルス感染経路の1つである男性より女性へのSexal Transmite(そのほか輸血、母児感染)も関係しているとおもわれ、一夫多妻が現在も習慣として認められていることにも関係しているかも知れない。 出身地または居住地別の総括として、同ウイルス感染者(関連抗体陽性者)はパプア・ニュ-ギニア国の北側でしかも、沿岸ないしは島々(ソロモン諸島除く)であるといえる。Hightlands(高地地域)と南側の沿岸域では(Gulf Provinceを例外とする)同ウイルスの汚染が少ない州と考えられる。 1989年はNorthern州ならびにMorobe州について再調査と確認をおこなった結果、それぞれ51例中15例(29.4%)、ならびに29例中8例(27.6%)と過去3ヵ年の調査結果とほぼ同様な傾向を示した。 成人T細胞白血病ウイルス関連抗体の検索にあっては、富士レビオ製のセロデアATLAキットを使用しているが、日本人の検体については他の検索法との一致と相関性はあるが、国外人では他の血液抗体(例えばマラリア感染など)との非特異反応もみられるという。その件に関して詳細な検索も必要とおもわれる。 一方この調査研究を基礎として、成人T細胞白血病ウイルス関連抗体陽性者のリンパ球そのものより同ウイルスを単離し、組織培養法を用いたウイルス株として保持する研究を他大学と共同研究で試みている。さらに次の段階は、そのウイルス株より分子生物学的手法による遺伝子の解明を行なうことも企画中である。
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