研究課題/領域番号 |
63042015
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | がん調査 |
研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
富永 祐民 愛知県がんセンター研究所, 副所長兼疫学部長 (30124530)
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研究分担者 |
松下 秀鶴 国立公衆衛生院, 地域環境衛生部, 部長 (30124407)
清水 弘之 岐阜大学, 医学部公衆衛生学教室, 教授 (90073139)
松木 秀明 東海大学, 医学部公衆衛生学教室, 助教授 (90096264)
森 亨 (財)結核予防会結核研究所, 第2研究部部長
土屋 永寿 (財)癌研究会癌研究所, 病理学, 研究員 (00072314)
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研究期間 (年度) |
1984 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
14,000千円 (直接経費: 14,000千円)
1989年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1988年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | ホンコン / 女性肺癌 / 室内汚染 / 受動喫煙 / 疫学 / 病理学 / 腺癌 / Adenocarcinoma |
研究概要 |
ホンコンの女性に高率にみられる肺癌の成因と病理組織学的特徴を明らかにするために、受動喫煙を含む室内汚染の曝露量に関する疫学的研究と肺癌の発生部位および組織学的特徴に関する研究を行った。 1)室内汚染曝露量調査 ホンコンの女性の喫煙率は比較的低く(約10%以下でかつ中年以降になってから喫煙を開始している者が多い)、ホンコン女性の高率の肺癌発生は喫煙で説明することはできない。そこで、調理や受動喫煙などの室内汚染の実態を客観的に把握するために、ホンコンの九龍地区の1小学校の学童約300人とその母親約300人を対象として、喫煙(受動喫煙を含む)、職業、調理法、呼吸器症状の有無、呼吸器疾患既往歴などに関するアンケ-ト調査、NO_2バッヂ着用によるNO_2個人曝露量調査、尿サンプルを採取して尿中のハイドロキシプロリン量の測定、一部の対象者については尿中のニコチン/コチニン量の測定を行った。日本(東京都世田谷区)でも同様の調査を行い、ホンコンと日本の成績を比較した。さらに、ホンコンの家庭33世帯と日本(東京都)の家庭16世帯において、ロ-ボリウム・エア-サンプラ-を用いて台所と居間の浮遊粉じんを補集して、芳香族多環炭化水素系発癌物質量を測定した。以上の調査により、次の結果が得られた。 (1)せき、たんなどの呼吸器症状の有症率は成人女性、子供共にホンコンでは日本の約10倍高率であった。 (2)NO_2の個人曝露量と尿中ハイドロキシプロリン量については、学童および母親共にホンコンと日本の間で差はみられなかった。受動喫煙と尿中ハイドロキシプロリン量の関係も明らかでなかった。 (3)一般家庭の台所と居間の浮遊粉じん量および芳香族多環炭化水素系発癌物質の濃度についてもホンコンと日本の間で大きな差はみられなかった。室内の落下細菌、真箘の量についても両国間に差はみられなかった。 ホンコンの成人女性および学童ではせき、たんなどの呼吸器症状の有症率が高率であることから、これらの慢性気管支炎が何らかのメカニズムで肺癌の高率発生につながると考え、ホンコンの成人女性数名から喀痰を採取し、嫌気性菌と好気性菌を培養し、国立がんセンタ-研究所の藤木博太部長らの協力を得て、それらの菌のプロモ-タ-活性を測定した。その結果、一部の嫌気性菌にプロモ-タ-活性があることが判明した。現在、これらの菌を同定すると共に、他の種々の菌のプロモ-タ-活性についても検索中である。 2)女性肺癌の病理組織学的研究 ホンコンの女性肺癌の発生部位および組織学的特徴を明らかにするために、ホンコンの九龍地区の一病院で手術を受けた女性肺癌76例と日本の癌研究所の女性肺癌54例の肺癌の発生部位と組織型を比較した。その結果、ホンコンの女性の肺癌は腺癌でも中心型が多いこと(日本では圧倒的に肺野型が多い)、腺癌の亜分類についてはホンコンでは背の高い円柱状組織型が多く、日本では細小気管支ー肺胞細胞癌が多く、肺癌の好発部位を反映していることがわかった。 3)肺組織に沈着した各種金属成分、アスベスト量等の測定に関する研究 ホンコンの大気汚染および室内汚染の程度を客観的に測定するために、ホンコンの女性の肺癌手術例および非肺癌剖検例約70例の肺組織および日本の女性肺癌および転移性肺癌手術例約50例の肺組織を採取し、放射化分析を用いて約40種類の金属成分の沈着量を比較した。その結果、発癌に関係があるとされているクロ-ム、ひ素、ニッケル、ベリリウムなどの沈着量については両国間で差がないか、むしろホンコンの方が低い傾向がみられた。アスベスト沈着量については現在なお測定中である。 ホンコンでは調理方法として油いためが頻繁に用いられているため、ホンコン女性では高温に加熱された油煙を吸入する機会が多いことが考えられる。そこで、ホンコンと日本の女性の肺に沈着した油の成分(脂肪酸)の量についても検索中である。
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