研究課題/領域番号 |
63043001
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡田 宏明 北海道大学, 文学部, 教授 (50002283)
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研究分担者 |
小谷 凱宣 名古屋大学, 教養部, 教授 (40111091)
岡田 淳子 北海道東海大学, 國際文化学部, 教授 (80050780)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 細石刄文化 / 小貝塚 / 海洋適応 / 北米北西海岸 / トリンギット族 / 魚止め遺構 / 花粉分析 |
研究概要 |
本研究は、1987年度のヘケタ島および周辺地区の調査による考古学資料と民族史資料の整理・分析を目的として行われた。 まず、東南アラスカの早期海洋適応の遺跡として注目されるチャック・クリーク貝塚の収集品については、石器・骨器・貝器等の実測図の作成、動物・鳥・魚・貝等の自然遺物の同定、分析の作業が進められた。第1地点の遺物は、細石刃(506点)、細石刃核(16点)が主体を占め、その他少数の彫器・削器に加えて、骨器(6点)、貝刃(1点)などが出土した。大量に出土した細石刃の分析から、細石刃核の製作過程が2タイプに分類できることが判明した。動物遺残の中に、マダラ・カサゴ・カレイ等が相当量存在したことは、この遺跡の海洋適応をより明確に証明したといえる。第1地点出土の炭が、東京大学タンデム測定室により、7150,7770B.P.と測定され、1985年のワシントン州立大学の測定値とほぼ一致したことも注目される。 第1地点以外に、13ケ所の試掘を行った結果、2ケ所で細石刄が発見され、今後の調査に期待がかけられたこと。また、第2地点の^<14>C年代が5130B.P.と測定されたことも特筆に値する。さらに、第1地点で採取された花粉の分析により、ヘケタ島では、トウヒ・ツガ混合林からツガ林への変化が他地域よりも早く、おそらく7150B.P.をすぎて間もないころに起こったという興味ある考察がうまれた。 チャック・レーク遺跡の発掘の経過は、現地で作成した地形図や地層断面図、航空写真から起こした等高線地図等を添えて、現在印刷中の報告書"Heceta Island:Anthropological Survey in 1987"(一部日本文)に、出土遺物の詳細な表とともに掲載されている チャック川の川口に近いウォーム・チャック遺跡については、現地のシーアラスカ会社との約束に従って発掘調査は一切行わず、現地の観察と測量調査だけにとどめた。したがって、この遺跡の全貌を知ることは今の時点では困難だが、菜園の痕跡が明確にされただけで、集落址と断定するだけの証拠に乏しい。我々が作成した測量図にみられるように、ベニサケ等を捕獲する石積み遺構がよく保存されており、同じく川口の岩に残された線画とともに、この地域の同種の遺構と比べても、高い資料的価値をもつといえる。 1987年度の調査は、第一次調査でもあり、ヘケタ島の考古学的調査に多くの時間をさいたために、民族誌資料の収集を十分に行うことはできなかった。プリンス・オブ・ウェールズ島のクレイグ、クラワーク地区で、今後のための予備調査を実施しえたにとどまる。しかし、トリンギット族居住地の南端にあたるこの地域で、各集団の接触・移住の歴史を採ることは、今後に残された重要な課題であり、第二次、第三次調査ではこの分野に主力を注ぐ予定である。その意味で、アラスカ大学ジュノー校のオルソン教授が、初期のスペイン探検隊の記録をたどり、交易品の内容等を分析した論考を上記報告書に寄稿してくださったことは、今後の調査のためにきわめて貴重である。オルソン教授の論考を出発点として、我々は、現地の古老からの聞きとり調査や、今後さらに文献調査を深める計画である。
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