研究課題/領域番号 |
63043002
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊地 勝弘 北海道大学, 理学部, 教授 (80000793)
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研究分担者 |
太田 昌秀 ノールウェイ国立極地研究所, 主任研究官
遠藤 辰雄 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (20001844)
上田 博 北海道大学, 理学部, 助教授 (80184935)
谷口 恭 北海道大学, 理学部, 助手 (40150247)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1988年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 雪結晶 / 低温型雪結晶 / 極域エアロゾル / 土壌物質 / 海塩粒子 / 燃焼生成物 |
研究概要 |
昭和62年度にノールウェイ北極圏の現地調査で得られた膨大な資料は、主として、菊地と上田が低温型雪結晶の成長に関する考察を行い、谷口、遠藤、太田がエアロゾル粒子の電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析装置を用いて成分分析等を行った。また、エアロゾル数濃度の解析および流跡線解析は谷口によって行われた。低温型雪結晶の中心核および大気中のエアロゾルとの関係は主として菊地によって総括された。現在までに得られた成果は次のようなものである。 1.これまでの低温型雪結晶の最も代表的なものとしては、「御幣型;Gohei twin」、「かもめ型;Sea gull」、「矛先型;Spearhead」等がある。今回の観測では、従来の御幣型の他に、中心から左右対象に御幣型成長をしている「二重御幣型;Double gohei twin」とでもいうべき新しい型の雪結晶が発見された。これらの結晶の成長は、上田・菊地による半球状微小水滴の単結晶の底面による凍結実験で得られた結果で説明された。更に、これらの結晶の一部の成長温度領域は、いわゆる暖かい角柱の成長領域である可能性が示唆された。 2.これまでに報告がなかった御幣型の底面に角板または樹枝状結晶が成長したものが数多く発見された。そのため、従来まで不足していたa一軸方向の情報も考慮することができた。その結果、御幣型の先端のなす角度約78°の場合は二個の柱面は平行に近いが、他の場合は、柱面間のなす角度はかなり大きいものがあり、御幣型の結晶方位の組合せに多数の可能性があることが示唆された。 3.一方、御幣型、かもめ型、矛先型の成長相互の関連について、これまでに極域で観測された数多くの顕微鏡写真と、結晶成長の室内実験の結果からも考察が行われた。その結果、矛先型は、cー軸のなす角度が約116°で、柱面同士のなす角度は30°である。矛先型は、(101^^-3)面を接合面とする双晶で、結晶先端の角度が約56°の御幣型結晶に対応する。また、矛先型結晶は、内側に曲がったかもめ型結晶の羽根の一つである。内側に曲がったかもめ型結晶は、母結晶となる矛先型結晶の接合部から、結晶構造が母結晶と同様な羽根が二次的に成長してできた結晶である。もう一つのタイプの、羽根が外側に曲がったかもめ型結晶は、二つの羽根のなす角度が約130°であり、その羽根の結晶構造は、矛先型結晶と同じである。また、それらは矛先型結晶の形成時に貫入双晶によって形成される可能性がある。矛先型結晶と御幣型結晶の形成機構は、立方晶構造モデルと底面上での回転双晶によって説明できそうである。 4.第1次カナダ北極圏イヌビックでの観測で研究代表者の菊地によって発見された十八花の雪結晶は、その後、菊地・上田によってその成長機構が論じられた。しかし、十二花結晶を含む多花結晶の成長機構は、従来まで、主としてcー軸方向からみた結果にもとづいていた。今回の観測で、数多くの十二花結晶が観測されたので、cー軸に直交する方向からの観察に重点を置いてその成長機構を考察した。その結果、回転双晶説で期待される22°と28°のピークはそれほど顕著ではなく、また凍結雲粒説と考えられる凍結雲粒の頻度もそれほど多くはなかった。これらのことから、多花結晶の多くは雪片説であると結論された。 5.低温型雪結晶の中心核の成分分析では、土壌起源、人為起源、海洋起源で分類した結果、選択的に海洋起源の物質を中心核にし易いという傾向は、はっきりとは認められなかった。 6.アルタ観測点で、パーティクルカウンターによるエアロゾルの数濃度の日変化と気塊との相互関係を流跡線解析から考察した。その結果、北極海周辺から流入してきた気塊に覆われた時期は数濃度が低く、北ヨーロッパの工業地帯を通過してきた気塊の時期は数濃度が高いという傾向がみられた。 今後は、これまでに得られたデータの詳細な解析、および観測例の少ないグリーンランド等での観測を行い、最終的に低温型雪結晶の成長条件およびその成長機構を明らかにする予定である。 尚、成果報告書は英文180頁に括められ、平成元年3月に印刷公表された。
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