研究課題/領域番号 |
63043005
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐久間 敏雄 北海道大学, 農学部, 教授 (50001756)
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研究分担者 |
佐藤 利幸 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (00154071)
今井 弘樹 北海道大学, 農学部, 助手 (20002058)
山口 淳一 北海道大学, 農学部, 助教授 (80001478)
田中 明 北海道大学, 名誉教授 (30001374)
IMAI Hiroki Faculty of Agriculture, Hokkaido University
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1988年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | アマゾン川水系 / 農業生態学的調査 / セラード / アマゾン森林 / オキシソル / アルティソル / 熱帯・亜熱帯農業システム |
研究概要 |
南米の赤色土地帯における農業生態学的諸条件を明らかにし、当該地域における合理的で永続性のある土地利用、営農体系を確立するための基礎資料を得る目的で、ブラジル中央高原のブラジリアからアマゾン川上流のクルゼイロ・ド・スルにいたる地域の調査結果を検討し、集約した。調査地域は次の4地域に大別できる。すなわち、1)ブラジル高原のセラード地域、2)パンタナルおよびその周辺地域、3)中間地域、4)アマゾン川上流地域である。 ブラジル高原のセラード地域:年降水量は比較的多いが(1,200ー1,800mm)、長い乾季をもち、脊薄な赤色土と相伴って、近年まで粗放な肉牛放牧システムが土地利用の中心になってきた。しかし、最近15年間に、コムギ、ダイズを主とする大型穀物作システムが急速に普及し、土地利用の体系が急変しつつある。大河川流域の低地には、大規模な水田開発が行われ、見るべき成果を納めつつある。 パンタナルはブラジル南西部の大湿原で、季節的に冠水する低地である。肥沃な氾濫原堆積物を母材とする土壌が優占するが、自然保護区になっているために農業的利用は制限されている。周辺台地上の主要土壌はブラジル高原に類似するが、段丘地・山麓斜面には塩基に富む肥沃な土壌が分布する。パンタナルでは乾季には低地の自然草地に放牧し、雨季になると冠水しない台地・丘陵地に移動する特異な大肉牛経営が見られる。 セラードから熱帯降雨林への移行帯は、主として、ロンドニア州に相当し、標高400ー100mの自然環境条件の変化が著しい地域である。アマゾン森林の大半を占める半常緑熱帯林に覆われているが、標高、斜面の向き、土壌条件等を反映して移行型の植生が多い。この地域には、塩基性の母材に由来する比較的肥沃な土壌が多く、ゴム、カカオ、コーヒー等の永年作物を経営の基本とした小規模自作農がこれに入植して開発の中核になっている。 ブラジル高原のセラード地帯は地形が単純で、開墾の障害になる樹木が少ないために、大規模畑作を低コストで導入できるが、土壌が軽鬆・脊薄で下層土の圧密、土壌侵食の激化が問題であり、将来的には土壌改良・肥培のコストと収益がどうバランスしてくるかが大きな問題になろう。この地域の湿地(バルゼア)における稲作は問題点が少なく、良い成績をおさめている。水田耕作は保全農法としても優れたものであり、今後の進展が期待される。 パンタナル湿原は、自然保護のために限られた利用しかされていないが、周辺低地では水田の開発が進められており、台地・丘陵地にもアグロヴィラ・プロジェクトによる戸別入植が盛んである。肥沃度の高い土壌が多く、将来性は大きい。 移行帯の土地利用は、自給作物と樹木作物を組み合わせた複雑な体系をとっている。土壌の肥沃度が高い土地が多く、現段階では低インプットで一応の成果を挙げているが、長期的には適切な土壌改良と肥培のコストを考慮して、安定な生産が可能かどうかを見きわめる必要がある。 熱帯降雨林地帯は、調査地域西端のアクレ州に分布する。開発基盤の整備が不十分で、農業的利用は国道、主要州道沿線に限定されている。気候的には湿潤・多雨で、土壌は粘土質の未熟なもの(エンチソル、インセプチソル)が多く、障害物除去と土壌改良のために多額の初期投資が必要であるが、セラードに比べると土壌の肥沃は高く、将来性はある。道路沿線の既開発地には放牧を主とした大農場も見られるが、森林との境界領域ではキャッサバ、トウモロコシ、雑穀類を主作物とする移動耕作が広く行われている。移動耕作地の地力維持と奥地入植者の生活環境の改善が急務である。 移行帯からアマゾン上流域にかけては、製材業も盛んで、有用材の伐採・搬出の後、火入れ、短期の作物栽培(障害物除去)、移動あるいは草地造成の過程を経て耕地が造成される。伐採、火入れによる森林の破壊が進みつつあり、その保護が問題である。常畑、移動耕作畑、草地、水田を含めた人為生態系の環境保全機能について精度の高い情報を集積する必要がある。
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