研究課題/領域番号 |
63043014
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
床次 正安 東京大学, 理学部, 教授 (80029850)
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研究分担者 |
BARRETTO Pau サンパウロ大学, 宇宙地球物理学教室, 教授
FUJIMORI Ken サンパウロ大学, 宇宙地球物理学教室, 教授
相川 信之 大阪市立大学, 理学部, 助教授 (20047327)
小澤 徹 東京大学, 理学部, 講師 (00011651)
堀内 弘之 東京大学, 理学部, 助教授 (80029892)
BARRETTO Paulo M. de Cam Instituto Astronomico e Geofisico, Universidade de Sao Paulo, Brasil
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1988年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | ブラジルの岩石鉱物 / ポッソス・デ・カルダス / アルカリ岩 / カーボナタイト / 希土類鉱物 / 鉱物組織 / 風化土 / 燐・チタン鉱床 |
研究概要 |
本調査研究の目的は、ブラジルの盾状地に沿ってほぼ南北に点在するカーボナタイト・アルカリ複合岩(以後単に複合岩と記す)に特徴的な希土類元素を濃集した地域の鉱物調査・採集を行ない、鉱物種の記載、鉱物の生成環境と鉱物組織との関連の解明、化学組成と鉱物結晶構造との関連の解析を行なうことにある。昭和62年度には現地調査2回、昭和63年度の研究総括では現地の大学の研究者一名を招聘し、かつ、現地調査1回を行なった。調査は現地の大学の研究者と共同で行なった。調査対象地域はサンパウロ市より北へ200kmのサンパウロ、ミナスジェライス両州の境にあるボッソス・デ・カルダス、更に北へ約200km付近のアラシャ、タッピーラ、また更に北へ約200kmのゴヤス州カタロンの燐・チタン鉱床地域、及びサンパウロ市の南西約200kmのカジャチ地域である。調査の内容は下記のように要約される。 (1)ポッソス・デ・カルダス地域においては、(a)セローテ、ブリジダスなどの地点で"カルダサイト"とよばれるジルコニウムが極めて濃集した岩石を採集した。岩石中ジルコニウムはzircon、baddeleyiteという鉱物を形成し、特に後者はリボン状に広がるコロホルム組織を形成しており、水溶液が関与し二次的鉱物としてジルコニウムを濃集することを示唆している。また、(b)モロ・ド・フェロ地点では、極めて鉄に富んだ貫入岩がみられる。この岩石はほぼ磁鉄鉱のみから成り、部分的に小石大に分解し付近の風化土を覆い浸食を妨げている。pyroxeneを中心とするアルカリ岩が風化しsericite化したものとみられる風化土中には、Thなどの放射性元素が濃集している。放射性元素がどのような鉱物に濃集しているかは今後の鉱物の分析・解析に期待される。(c)ポッソス・デ・カルダス地域の随所に見られるアルカリ岩や、この地域を円形に取囲む外輪山を形成する岩石はpyroxeneを中心とする岩石であるが、細粒から粗粒の鉱物結晶を含むものまで夫々の地点において異なり生成環境の多様性を示す。(2)ミナスジェライス州タッピーラ、アラシャ地域の複合貫入岩構成鉱物は、8000万年〜1億年間での風化によって炭酸塩や珪酸塩鉱物中のカルシウム、マグネシウム、シリコンなどの成分が溶脱し分解している。一方、燐、チタン、ニオブなどを含む安定な鉱物が濃集している。従って、肥料とし
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ての燐酸カルシウムや合金原料としてのチタン、ニオブなどを産する露天掘り鉱床として開発されている。最近の状況では、風化土の岩盤より新鮮な複合岩が見られるようになり、これらの岩石を構成する鉱物を研究する上で貴重な試料が得られた。さらに、複合岩の風化の過渡的過程にあると見られるglimmerite中でperovskiteからanataseへの漸移を示す組織も走査型顕微鏡によって観察された。また、Ca-Zr-Ti-O系の鉱物や含Alカルシウム燐酸塩などの希有な鉱物の確認や、炭酸塩と共生する雲母に於いてFe、Alの結晶構造中での原子配置に起因すると見られる特異な多色性の観察など、今後の詳細な解析が期待される。(3)ゴヤス州カタロン地域も肥料としての燐酸カルシウムを採掘しているが、この地域の風化土には希土類元素が極めて濃集し、将来はその資源としても活用すべく構成鉱物の基礎データが要求されている。希土類元素は母岩のpyroxeniteにカーボナタイトが貫入しもたらされ、風化によって濃集したと見られる。地表より未風化岩盤の複合岩に至る約100mにも及ぶ風化土のボーリングコアを現地鉱山会社GOIASFERTILの好意により入手し、鉱物分布の分析を行なった。コアの上半部は風化が著しく炭酸塩は全く観測されない。Fe成分はmagnetiteとしても観測されるが、limonite化が著しく進み、SiO_2成分の再結晶化も見られる。コア中部ではFe成分は一部hematiteとして観測される。下半部では部分的に風化されているがdolomite、magnetite、biotiteなど複合岩に特有な鉱物が観測される。Ce、Laなどの希土類元素は上部から下部に至るまで観測されるが、中〜下部ではその大半はmonazite、cheralite等に含まれるものである。地表の風化した岩石中に含水燐酸塩であるrhabdophaneが見られることから、コア上部の希土類鉱物もrhabdophaneであろうと予測される。(4)カジャチ地域では複合岩の極めて新鮮な試料が得られた。母岩はジャクピランガイトと云われる、チタンに富むpyroxeneから成る岩石であり、岩石中でpyroxeneの占める割合は90%にも及ぶ。炭酸塩質マグマと母岩のジャクピランガイトとの反応を示す流状組織がメートルからミクロに及ぶスケールで観測され、複合岩の生成に伴う鉱物の研究をするのには最適の試料である。 以上、本研究調査で採集した岩石・鉱物は、日本の地質では得られ難い稀な試料である。複合貫入岩、アルカリ貫入岩はさらに北の地域においても見出されており、地域毎の特異を知る上で今後共に現地の大学の研究者と共同で調査研究を継続することが必要である。採集試料の鉱物学的記載・組織観察、化学分析などの研究成果は部分的に鉱物学関連の学会で発表した。現在、更に詳細な分析・解析を継続中である。 隠す
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