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海南島の人類学・言語学的調査(第二次:研究総括)

研究課題

研究課題/領域番号 63043016
研究種目

海外学術研究

配分区分補助金
応募区分学術調査
研究機関東京大学

研究代表者

尾本 恵市  東京大学, 理学部, 教授 (10011503)

研究分担者 杜 伝書  中山医科大学, 医学系, 教授
杜 若甫  中国科学院, 遺伝研究所, 教授
呉 汝康  中国科学院, 古脊椎動物古人類研究所, 教授
平井 百樹  東京大学, 理学部, 助教授 (60156635)
三澤 章吾  筑波大学, 社会医学系, 教授 (50086534)
WU Rukang  INSTITUTE OF VERTEBRATE PALEONTOLOGY AND PALEOANTHROPOLOGY, ACADEMIA SINICA
DU Chuanshu  SUN YAT-SEN UNIVERSITY OF MEDICAL SCIENCES
研究期間 (年度) 1984 – 1988
研究課題ステータス 完了 (1988年度)
配分額 *注記
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1988年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
キーワード身体計測 / 集団遺伝学 / 言語学 / 海南島 / 中国少数民族 / リー族 / ミャオ族 / フイ族
研究概要

この海外学術研究の目的は、アジア・太平洋地域の人類集団の形成に重要な役割を演じたと考えられる中国南部の少数民族の人類学的、遺伝学的ならびに言語学的特徴を明らかにし、ひいては、日本人の起源の解明にも役立てようとするものである。このため、中華人民共和国の最南部に位置する海南島の少数民族であるリー(黎)族、ミャオ(苗)族およびフイ(回)族につき、中国の科学者との共同で野外研究を行う計画をたてた。調査項目は、身体計測、血液内遺伝標識の検査ならびに言語学的資料の収集である。昭和59年度の予備調査についで行われた昭和60年度の第一次本調査では、トンザー(通什)およびパオティン(保亭)地区を中心にリー族とミャオ族の計測および採血を行った。また、サンヤ(三亜)地区にてフイ族の計測と採血を行った。これらに関する検査結果は昭和61年度の調査総括にてまとめられた。
昭和62年度に実施した第二次現地調査では、バイサー(白沙)地区が主な調査地として選ばれた。この地域のリー族は方言や文化の上で第一次調査の対象であるグイ・リーとは明瞭に異なるブンティー・リーという集団である。採血は、バイサー地区にてリー族151名、ミャオ族85名、漢族102名につき行われた。現地にて赤血球酵素G6PD欠乏症の検査をしたのち、血液試料は広州市に運ばれ、血液型10型式の検査および染色体プレパラートの作成が行われた。さらに、血球と血清とを分離し凍結保存された試料は北京市に送られ、電気泳動法により赤血球酵素4種、血清蛋白5種が検査された。言語学的調査は、ミャオと呼ばれているが実はヤオ(瑶)語の一種であるムン語、リー語、ツォンホア(村話)および海南漢語分昌方言について基礎語彙の収集ならびに音韻分析を行った。昭和63年度にはこれら資料の整理、分析が行われた。全体として本研究の成果はおよそ次のようにまとめられる。
(1)人類学の分野で初めて日中合同の野外研究が実施された。また、身体計測と遺伝学的検査および言語学的調査を同時に行うという学際的な研究も初めてのことである。(2)身体計測については、44の計測項目および21の示数につき、リー、ミャオ、フイの3集団が比較された。中国東北、台湾、日本の集団とのクラスター分析の結果では、海南3集団は1群をなし、日本よりも台湾の集団に近く、東北集団とはもっとも離れる。(3)遺伝学的調査では、各種遺伝標識の遺伝子頻度データをもとに遺伝距離を求め、近隣諸集団とのクラスター分析により近縁性を推定した。その結果、グイ・リーとブンティー・リーとの距離は極めて近く、両者が遺伝的にも近縁であることが実証された。しかし、ミャオ族では、地域の異なる2集団間で大きな遺伝距離がみられ両者の移住の歴史には差があることが推定された。また、リー族と雲南省のチュアン(壮)族との近縁関係が示され、ミャオ族と共に南方のクラスターを形成するが、フイ族は日本、朝鮮、モンゴルの集団と共に北方のクラスターに属し、漢族は両者の中間に位置することが判った。(4)赤血球酵素G6PD欠乏症はリー族男性の6ー7%、ミャオ族男性の17%という高い率で見出されたが、フイ族ではまれであった。また、異常血色素サラセミアもリー族およびミャオ族に高率(ベータ鎖異常7ー9%、アルファ鎖異常14ー24%)で存在していることが発見された。これらの事実は、過去におけるマラリアの多発との関係を推定させる。(5)男性のY染色体については、リー族とミャオ族は漢族と同様に東アジアのモンゴロイドの特徴である長い形態を示した。(6)言語学的調査では、これまで殆ど資料のなかったムン語についての基礎資料が得られたことは大きな成果である。ムン語の声門閉鎖を伴う有声閉鎖音の起源が無声閉鎖音であり、ベトナム語と同じタイプの音韻変化が起こっていることが判明した。村話はリー語の一種とみなせる一方、リー語の方言の一つとされているジャモ(加茂)方言は他のリー語方言とは相当に隔たりのある言語で、独立した一言語と見ることもできる。

報告書

(1件)
  • 1988 研究成果報告書概要

研究成果

(10件)

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  • [文献書誌] Keiichi Omoto: 人類学雑誌. 95. 240 (1987)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
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      1988 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Wu Rukang: 人類学雑誌. 95. 241 (1987)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
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      1988 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Shogo Misawa: 人類学雑誌. 95. 241 (1987)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
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      1988 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Keiichi Omoto: 人類学雑誌. 96. 230 (1988)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
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      1988 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Keiichi Omoto: 人類学雑誌. 96. 231 (1988)

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  • [文献書誌] C.S.Du: Gene Geography.

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      1988 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] KEIICHI,OMOTO: "JAPANESE-CHINESE JOINT STUDY ON NATIONAL MINORITIES IN HAINAN ISLAND (1ST STUDY). UNTRODUCTION." JOURNAL OF THE ANTHROPOLOGICAL SOCIETY OF NIPPON. 95. 240 (1987)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
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      1988 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] WU,RUKANG: "JAPANESE-CHINESE JOINT STUDY ON NATIONAL MINORITIES IN HAINAN IS. (1ST STUDY). 2.ANTHROPOMETRY OF LI, MIAO AND HUI NATIONALITIES." JOURNAL OF THE ANTHROPOLOGICAL SOCIETY OF NIPPON. 95. 241 (1987)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1988 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] SHOGO,MISAWA: "JAPANESE-CHINESE JOINT STUDY ON NATIONAL MINORITIES IN HAINAN ISLAND (1ST STUDY). 3.BLOOD GROUPS." JOURNAL OF THE ANTHROPOLOGICAL SOCIETY OF NIPPON. 95. 241 (1987)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1988 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] KEIICHI,OMOTO: "JAPANESE-CHINESE JOINT STUDY ON NATIONAL MINORITIES IN HAINAN IS. 4. RED CELL ENZYME AND SERUM PROTEIN TYPES." JOURNAL OF THE ANTHROPOLOGICALSOCIETY OF NIPPON. 96. 230 (1988)

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      1988 研究成果報告書概要

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公開日: 1988-03-31   更新日: 2016-04-21  

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