研究課題/領域番号 |
63043017
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 利貞 京都大学, 理学部, 教授 (40011647)
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研究分担者 |
川中 健二 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70020790)
高畑 由起夫 京都大学, 理学部, 助手 (90183061)
伊谷 純一郎 京都大学, アフリカ・センター, 教授 (10025257)
黒田 末寿 京都大学, 理学部, 助手 (80153419)
上原 重男 札幌大学, 教養部, 教授 (20145965)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1988年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | チンパンジー / 行動生態学 / 母子関係 / 雌間関係 / 離乳期の葛藤 / 性差 / 年令差 / 薬用植物 |
研究概要 |
タンザニアでは、マハレ山塊国立公園の総数約100頭からなるM集団のチンパンジーを調査対象とし、主として個体追跡法によって、性・年齢の異なる対象の行動・社会交渉を記録し、各分担者が約200時間の観察資料と、総計約20時間のビデオ映像記録を得た。西田と塚原は、雌のチンパンジー間の社会関係と母子関係(とくに、離乳期の母子間葛藤)を研究した。雌間関係と母子関係に関する成果として次のものがある:(1)大人雌は遊動パターンと、大人雄との交渉の頻度によって、二つのタイプー広範囲を動き社交的な雌と、コア・エリアをもち非社交的な雌ーに分けられる。(2)雌の遊動パターンは、繁殖サイクルと密接に関係しているが、必ずしもそれだけでは説明できない。例えば、K集団より移入した雌の大部分は、赤ん坊の年齢とは関係なく「非社交型」であった。しかし、一頭は、前の赤ん坊を大人雄に殺されたのち、遊動パターンを変化させ、広域遊動タイプとなった。(3)離乳の時期は個体差が大きく、生後60カ月で離乳していないものがいる一方、40カ月で離乳したものもいた。(4)雌の方が雄より離乳が早い傾向がある。すなわち、出産間隔は前の子供が雌である場合の方が、雄である場合より短い。離乳期の雄は、雌より激しく母親の交尾を如害する。また、離乳期の雄は母親とよく交尾し、母親も拒否しない。離乳期の子供に見られる行動の性差は、性的二型と関係する雄の発育遅滞(息子に対する母親の投資増大)によって説明できよう。上原は、雄の採食戦略の年齢・順位による相違を研究した。6頭の雄の比較の結果、(1)第一位の雄の採食スピードは抜きんでて早い。(2)落果を拾うという行動は年長の個体に多く、若い雄にはこの行動がまったく見られない者がいた。(3)アリ食い行動は、大人雄にはほとんど見られないが、若者雄にはよく見られた。採食行動におけるこれらの年齢差は、社会的地位の相違による時間配分戦略の相違、木登り等の運動のコストの年齢差、動物タンパクの必要量の年齢差などから説明できると考えられる。ハフマンは、雄一、雌2頭の老齢個体についてその行動特徴をまとめた:(1)老齢個体は毛づくろいをよく受けるが、自分の方からはあまり毛づくろいしない。(2)老齢個体に対しては、すべての大人が高いトレランスを示した。以上の事実は、チンパンジーの老齢個体は、順位とは関係なく、ユニークな社会的地位を占めていることを示唆する。なお、調査隊の副産物として、次のものがある:(1)チンパンジーが肉食獣シヴェットを食べるのを観察(初記録)。(2)1987年にチンパンジーが最も頻繁に捕食した動物は、例(アカコロブス)と異なり、ブルー・ダイカーであった。(3)若者期の息子(11才)が母親をレイプするのが観察された。母親は抵抗し、息子は射精できなかった。(初観察)。(4)Mグループ生まれの若い雌1頭の転出確認。(5)チンパンジーは植物を薬として使っている可能性が高いことを以前報告した。今回、Aspilia以外にその葉を噛まずにゆっくり呑込む植物を新たに2種確認した。また、病気のチンパンジーがキク科のVernoniaの茎をかじるのを観察した。これらの植物は、現在専門家の化学分析を受けている。古市と黒田による、ワンバでのピグミー・チンパンジー研究の成果は次の通りである。(1)隣接集団の個体が同一の木で採食するのが5回観察され、ピグミー・チンパンジーはチンパンジーと異なる平和的な集団間関係をもつことが発見された。(2)同一集団の高順位雌の間で連合関係が形成され、同盟によって順位の逆転の起こるのが観察された。(3)大人雄が離乳期の赤ん坊の世話(運搬、食物分配、毛づくろい)をすることや、アルファ雄が性的干渉をすることも、初めて観察された成果である。黒田は、ザイールに入る前に、コンゴ北東部マカオ周辺で予備調査をおこない、ゴリラとチンパンジーが同所的に住む好適なフィールドを発見した。ゴリラとチンパンジーの生態学的競合の研究は、初期人類の競合(たとえば、アウストラロピテクス・アフリカヌスとロブスツス)のモデルを提供すると考えられ、人類学的に非常に興味深いテーマである。次のような予備的資料が得られている:(1)両種の間で、食物は大幅に重複している。(2)しかし、クズウコン科の多い明るい森林に
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