研究課題/領域番号 |
63043020
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三浦 不二夫 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (90013789)
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研究分担者 |
F Enriquez.H メキシコ国立自治大学, 歯学部, 教授
相馬 邦道 東京医科歯科大学, 歯学部, 助教授 (10014200)
花田 晃治 新潟大学, 歯学部, 教授 (90013979)
一條 尚 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (20013807)
富田 喜内 東日本学園大学, 歯学部, 教授 (70001013)
HABIB F.Enriquez Facultad de Odontologia,Universidad Nacional Autonoma de Mexico, Professor
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1988年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 歯科人類学 / モンゴロイド / 顎顔面頭蓋形態 / 咬合様式 / 歯列弓形状 / 歯冠近遠心幅径 / 口腔内疾患 |
研究概要 |
歯科医学の分野において、歯・顎顔面頭蓋の形態ならびに咬合様式を人類学的また歯科人類学的見地より基本的に把握することは重要な課題である。この点に関して、従来より日本人の歯科人類学的位置つけを明確にするため、他人種とりわけ日本人に関連の深いモンゴロイドとの比較検討を加えてきており、昭和57年には本研究費助成により、南米ペルーにおいて"古代ペルー人の歯科人類学的研究"の調査を行った。この研究の継続として、今回はユカタン半島のインディオ210名(男性75名、女性135名)およびメキシコ国立人類学博物館の頭骨193体(男性115体、女性78体)を対象とした海外学術調査"中米インディオの歯科人類学的研究"を行った。採取されたX線写真、顔面・口腔内・頭骨写真、歯列模型、人類学的計測、一般的診査事項等の資料を基に、彼らの歯・顎顔面頭蓋形態とペルーインディオのそれとの比較検討を中心に行い、併せて、日本人、北米白人のそれとも比較検討した。 1.人類学的検討:(1)プレ・コロンビア期に属する古代頭骨(推定年齢:21ー55歳)はインカ骨や人為的変形頭骨(前頭・後頭型、円錐型等)が古代ペルーインディオ頭骨と同様に高頻度に認められた。(2)身長、体重が日本人に比して劣っていることや頬骨弓幅、顔面高が小さいことがペルーインディオと同様に認められた。また、頭示数は80以上であり、日本人、ペルーインディオと同様の値を示し、モンゴロイド特有の短頭型を呈していた。 2.顎顔面頭蓋形態の検討:(1)顎顔面頭蓋全体において、北米白人に比し、頭蓋および顔面の前方深さ成分が小さく日本人、ペルーインディオと同様の傾向を呈した。(2)上下顔面部において、日本人に比し、前顔面高が小さく、かつ眼窩部の突出が少ない点でペルーインディオに類似していた。(3)上下顎骨部において、ペルーインディオに比し、上下ともに前方位にあり上下顎前突の特徴を有していた。(4)古代から現代にかけての時代的変化として、上下顎骨の前後的な縮小化および顎角、下顎下縁平面角の開大化が確認され、この変化はペルーインディオと同様であった。 3.歯および歯列弓形状の検討:(1)歯冠近遠心幅径は、ペルーインディオ同様、前歯では北米白人、日本人に比し小さく、小臼歯では北米白人より大きく日本人より小さかった。また、大臼歯では日本人同様北米白人に比し大きかった。加えて、古代中米インディオのそれに比して全歯に渡り小さな値を呈していた。(2)歯の形質は、シャベル歯ではペルーインディオ、日本人に比し少なく、北米白人に比し多かった。また、カラベリ結節ではペルーインディオ、日本人より多く、北米白人より少なかった。(3)歯列弓形状は、北米白人に比し幅広で、その傾向は日本人、ペルーインディオ、古代中米インディオと同様であった。また、歯列弓長径はペルーインディオに比し大きかった。 4.咀嚼機能の検討:(1)咬合力は学童期より20歳位まで増齢とともに増加し、その後30歳代後半から減少する傾向が認められた。(2)咀嚼機能の結果として生じる歯の咬耗は日本人、北米白人と同程度であり、その程度はペルーインディオのそれに比し小さかった。 5.不正咬合および口腔内疾患の検討:(1)第一大臼歯咬合関係はペルーインディオと同様にアングルの不正咬合分類I級が約7割と高頻度であり、日本人に比して良好であった。(2)前歯被蓋関係はoverjet,overbiteが北米白人、日本人に比して小さく、ペルーインディオと同様の傾向が認められた。一方、前歯歯軸はペルーインディオに比し、上下前歯ともに唇側傾斜が著明であった。(3)上下前歯部の相対捻転の頻度は、ペルーインディオが最も高く、中米インディオ、日本人、北米白人の順であった。(4)下顎第三大臼歯の正常萌出率は日本人のそれが約5割であるのに比し、中米インディオのそれはペルーインディオと同様約8割と高率であった。5)口腔内疾患は、う蝕、歯肉炎ともに日本人と同程度で、ペルーインディオに比して高頻度であった。 以上のように、歯顎顔面頭蓋の形態および咬合様式に関して、モンゴロイドとコーカソイドとの間の相違性、また中米およびペルーインディオの属するアーリーモンゴロイドと日本人のようなレイトモンゴロイドとの類似性や相違性が検討され、より歯科人類学的位置つけを明確にした。今後は中国大陸に居住するモンゴロイドの調査を行い、その成果をペルーインディオや中米インディオの結果および北米インディアンやエスキモーの知見に付加することにより、モンゴロイド全体の歯科人類学的関連性を集大成する計画である。
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