研究課題/領域番号 |
63043027
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小川 英次 名古屋大学, 経済学部, 教授 (00022450)
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研究分担者 |
根本 二郎 名古屋大学, 経済学部, 講師 (20180705)
皆川 芳輝 名古屋大学, 大学院・経済学部, 助教授
岸田 民樹 名古屋大学, 経済学部, 助教授 (50128766)
牧戸 孝郎 名古屋大学, 経済学部, 教授 (60022464)
木下 宗七 名古屋大学, 経済学部, 教授 (70022457)
MINAGAWA Yoshiteru Faculty of Economics,Nagoya Gakuin University,Associate Professor
YAMADA Motonari Faculty of Economics,Nagoya University,Assistant Professor (10158222)
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研究期間 (年度) |
1986 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 技術移転 / 経営移転 / 現地化 / 海外進出 / 直接投資 |
研究概要 |
アジアの63の日系企業を対象とする、技術移転にかかわる労務管理・生産管理・原価管理に関する調査より、次のような結果が得られた。 文化や宗教など育ってきた背景の相違により、日本人と現地人の考え方や行動様式には大きな隔たりがあるため、とくに労務管理においては、日本でとられている方法をそのまま現地にもちこむことはできない。今回調査した日系企業の中には、労務管理は現地人従業員に任せ、日本人従業員は生産管理に専念している企業もあった。 調査対象企業は、現地人従業員を動機づけるため、労務面でいろいろな工夫を講じていた。 刺激的賃金制度の導入については、導入している企業の方が導入していない企業よりも少なく、全体に占める割合は、前者が27%、後者が73%を示し、逆に年功に基づく昇給制の採用については、採用している企業の方が採用していない企業よりも多く、それぞれの割合は、前者が72%、後者が28%であった。このように、個々人の競争心を煽るというよりもむしろ全体のバランスを重視する企業が多くみられた。 小集団活動は、アジアの日系企業に根づき始めており、いよいよ活発化する傾向にある。今回の調査でも、小集団活動を実施している企業は、全体の65%を占めた。 次に生産管理に関して、とくに指摘すべきは、経営の現地化がかなりの進展をみせている点である。作業方法の決定については、現地で決めるとする企業が最も多く、全体の48.9%を占め、さらに現地人従業員が決めるとした企業の割合は15.6%を示した。部品等の現地調達比率については、調査対象企業を平均すると、45.2%となり、現地調達のうち、現地資本企業からの調達は62%に達し、27%を占める、当該国に進出した他の日本企業からの調達を大幅に上回った。 作業能率・不良率・納期達成率・生産のリード・タイム・製品ならびに材料・部品の在庫量の現地子会社と日本の親会社の比較に関する調査結果によると、全般的に、現地子会社と親会社の間には、依然として、明らかな差が存在する。しかし、上述のような生産活動に関連する指標について、毎年改善目標を設定している企業数は全体の83%にものぼり、これは、技術の向上に励む日系企業の姿を鮮明に浮かび上がらせる。 最後に原価管理に関して、現地での単位当たり製造コストは、日本本社を100とした場合、いかなる水準にあるかを調査結果からみると、全体の平均で、直接材料費が97、直接労務費が34、製造間接費が81となる。 アジアにおける製造コストは、現在でも、日本よりかなり低い水準にある。しかし、このようなコスト面のメリットを最大限に享受するためには、量産体制の確立が不可欠となる。今日、アジアの日系企業における原価管理の重点は、スケール・メリットの追求にあるといえる。 アジアの日系企業は、技術移転を図る上で解決しなければならないいくつかの問題を抱えていた。その中でとくに深刻なものとして、1つには、高い現地人従業員の転職率、1つには、現地における部品産業の脆弱性が挙げられる。 今回の調査において、1年間の離職率は、全体の平均で、12.2%をも示し、技術の蓄積の遅れに苦慮する日系企業の姿を浮き彫りにした。 アジア諸国においては、近年、現地調達の要請が進展をみせており、日系企業にとって、部品産業の育成は、ますます重要な問題となりつつある。
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