研究課題/領域番号 |
63043029
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丹生 潔 名古屋大学, 理学部, 教授 (50013363)
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研究分担者 |
D.H. Davis ロンドン大学, 理学部, 教授
G. Romano サレルノ大学, 理学部, 教授
数野 美つ子 東邦大学, 理学部, 教授 (30152664)
星野 香 名古屋大学, 理学部, 助手 (70022738)
丹羽 公雄 名古屋大学, 理学部, 助教授 (60113445)
KAZUNO Mitsuko School of Sciences, Toho Univ. Professor
ROMANO G. Univ. of Salerno Professor
DAVIS D.H. Univ. Colledge London Professor
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1988年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 重イオン原子核衝突 / 基本物質の相転移 / クォークグルーオンプラズマ / 原子核乾板 / 複合実験装置 |
研究概要 |
CERNにおいて原子核乾板とカウンターなどとの複合実験装置により捉えた200 A GeVの^<16>O、^<32>Sイオン、および対照用の200GeV/c陽子と原子核との反応を、名古屋大学で開発した自動飛跡解析装置を用いて測定解析し、激しいイオン・原子核衝突の中心部の超高温・超高圧状態で起こると考えられる基本物質の相転移の有無を検出し、その性質に関する新しい知見を得るとともに、上記反応で生成されるチャーム粒子など重いフレーバークォークを含む新素粒子の生成率の変化について調べ、物質の基本的階層における物理法則を探る事を目的として調査研究を進めた。 1988年度初めまでに上記各ビームあたり数十万個づつの反応を原子核乾板中に収集記録し、それらの原子核乾板を、日本側2/3、ヨーロッパ側1/3の割合で担当して測定解析を進めてきた。本年度には、データ解析の大部分を遂行している名古屋大学の現場にヨーロッパ側各研究機関および国内共同研究者に参集してもらい、総括のための国際共同研究会議を1989年1月9日より14日までの間に開催した。この総括会議によりこれまでのデータ解析の結果をとりあえず5編の論文にまとめることになった。各論文に報告される成果と新たな知見は下記の通りである。 1.^<16>Oイオンと原子核との激しい中心衝突反応(二次粒子数200個以上)におけるチャーム粒子の生成の断面積を調べたところ、基本物質の相転移が起こったときの理論的予測と異なり、その生成が抑制されていないことが示唆された。 2.200 A GeVの^<16>Oおよび^<32>Sイオンと原子核との反応で生成されるシャワー粒子数と入射核破砕片の大きさとの関係を調べたところ、核子・核子衝突の重ね合わせとして説明が可能なことが判明した。また、入射核破砕片の振舞いには、一部の研究で示唆されたような異常性は認められなかった。 3.^<16>Oおよび^<32>Sイオンと原子核との反応からの二次粒子の数と粒子当りの横向きエネルギーなどとカウンターで測定された総横エネルギーとの関係を調べたところ、二重パートン模型で予測されるものと違いのあることが分かった。 4.^<16>Oおよび^<32>Sイオンと原子核との反応からの二次粒子の角分布の揺らぎについて統計的有為性を検定したが、基本物質の相転移が起こったときに理論的に予測されるほどの顕著な結果は現れなかった。 5.200 A GeVの^<16>Oおよび^<32>Sイオンと原子核との電磁解離反応について詳細な検討を行ったところ、両者で解離の仕方に違いのあることが判明した。 これらの成果が得られたので、次期実験として^<16>Oや^<32>Sより重いpbイオンのより激しい中心衝突反応における基本物質の相転移の有無の検出に進むことになった。pbのような超重核同士の衝突では、二次粒子の多重度が1000を越えることが予測され、その分離測定には全く新しい実験技術が必要になる。我々日本のグループはこの様な実験に不可欠の、極めて少ない物質量でしかも1ミクロンという極めて高い空間分解能を持つ検出器として、薄い長尺フィルムベースの両面に原子核乳剤をそれぞれ60ミクロン厚に塗布したエマルションテープというユニークな検出器を開発し、他の実験に活用してきたが、これを重イオン衝突実験用に改良して用いることが上記の実験を成功させる鍵になることを主張した。これが認められ、すぐに準備に取り掛かることになった。まず、新装置のテストを経験済みの^<32>Sイオンを用いて1990年に行い、1991〜1992年に予定されているpbイオンを用いての本実験に備えることになっている。
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